負の塊
三日月に足りないのは、とにかく仲間の温もりだ。全てが私と同じ状況であったのなら、話しかけられることもなく、視線に入れられることもなく、ただそこにあるだけの物として扱われたはず。
私達は三日月のことをそんな風には思わない。三日月は仲間、継ぎ接ぎの仲間だ。その関係自体が継ぎ接ぎのように取って付けたようなものでも、この施設の者は誰もが三日月のことを心配し、常に思っている。まだここに姿を現していない摩耶達だって。
「……美味しい」
「よかったわ! ちょっと薄味かなーって思ったけど、病み上がりにはちょうどいいかなって。食べられそうならお昼からは普通のご飯にするわね。あ、パン派だったりするのかしら。何か食べたいものがあれば言ってね。出来る限りリクエストには応えることにしてるの」
「……好きにしてください……」
ご飯を食べるという行為も初めてのことだろう。ゆっくりとだが確実に食を進め、お粥を完食。最初にこれだけ出来れば上等だ。内臓に傷が無かったのはこういうところに効いてくる。
「はい、じゃあ私は食器を片付けるわね。若葉、あとはお願いね」
「ああ」
「それじゃあね三日月。また来るからね。何かあったら頼ってね!」
食べ終わった食器を持って、パタパタと出て行く雷。それを唖然としながら見送る三日月。これだけ嫌いという意思を見せつけても、全く折れることなく接してきた雷を見て、無言で考え始めている。
私はそれを邪魔せず、何もせずに側にいるだけ。何かあれば頼ってもらいたい。雷の気持ちが少しわかったかも。
キッカケは何だっていい。私でも雷でも。
少しだけでも、せめてこの施設の者相手だけでも、他人と仲良くなれるといい。
私はただ、三日月と仲間に、友達になりたいだけなのだ。
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