海の底へ
施設の新たな仲間、セスが加わり3日。特別なことは何もない、平凡な日常を過ごしていた。
私、若葉は基本的には雑務担当。その時に必要な戦力としていろいろな仕事を請け負っている。艤装整備、家事手伝い、さらには飛鳥医師の仕事の手伝いと、やることはなかなかに多い。私は働くのが好きなのでそんな生活はとても充実したものだった。
医師が管理しているだけあって、誰一人として体調不良を訴える者はおらず、誰もが有意義な生活をしている。
「食材、日用品の発注は完了した。言われていた書類の整理と、在庫の確認も終わっている。若葉は手すきになったぞ」
基本的に艤装の整備は摩耶主導の下、シロクロが協力して進めており、さらにはセスまでそこに加わっているため、私が入る必要がない。エコの整備が出来るのだから、他の艤装に対してもそれなりのことが出来たというのが大きい。まさかの即戦力である。
家事の方も雷と三日月がいればある程度はどうにかなる。毎日掃除しているため、人員を増やす必要も無く、食事洗濯も2人いればどうとでもなった。
「助かる。一旦休憩してくれ。午後からは摩耶が手を欲しがってるから手伝ってやってほしい」
「今すぐじゃなくていいのか」
「ああ。午前中にな、双子棲姫の艤装がある程度完成するそうだ。遠隔操作の艤装はまだ先だが、あの2人に潜水艦の力が戻るらしい」
漂着した深海棲艦の艤装の中に潜水艦のパーツがあったのは覚えている。それを使うことで、永続的に潜航が出来るようになるらしい。これで半分は修復出来たようなものである。
シロクロがこの施設に滞在し始めて2ヶ月無いくらい。材料がようやく流れ着いてくれたおかげで、ここまで辿り着けた。ある意味目標達成に近い。
「午後からはそれのテストをするそうだ。前回と違って、長時間の潜航だから、念のため人数が欲しいらしい」
「了解した。なら午後は摩耶につく」
「頼んだ」
クロのハイテンションが目に浮かぶようだった。最低限必要な力が取り戻せるわけだから、喜ばない理由がないだろう。
午後、昼食後すぐにテストをすることになった。前回のテストはいろいろと用意していなかったため、まさかの全裸潜水だったらしい。今回はそれから時間も経っているため、しっかりと水着も用意されている。
なんと潜水艦娘が使用している正式な水着らしく、さらにはそれを用意してくれた来栖提督のご厚意で、より双子棲姫の元々の服に近くなるように改良されている。
「あのオッチャンが用意してくれたんだよね」
「らしいよ……すごくしっくりくる……ね」
私は実物を見たことないのだが、艦娘にも双子の潜水艦姉妹がいるらしく、その水着を改良したものを着ている。色までしっかり染められていた。
そのため、実際着ていたものとはタイプが違うのだが、2人としてはとても着心地がいいようだ。
シロクロの艤装の主機部分は、私達と違い肌に直貼り。そのせいで前回は全裸潜水をする羽目になったのだが、今回は水着もその辺りを考慮して背中の部分がバックリと開いているデザイン。
主機を肩甲骨の辺りに貼り付け、さらには首回りに新たな艤装を装備した。これがシュノーケルと酸素ボンベを兼ねた艤装であり、装備しているだけで無限の呼吸が海中で出来るというシロモノ。
「すごいすごい、なんか上手く行く気がする!」
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