外の者
午後、飛鳥医師の言う通り、外部の遠征部隊が施設にやってきた。こちらの鋼材を持っていくということで、輸送のための上陸艇、大発動艇を2隻運用し、そのまま工廠へと入ってくる。後ろからやってきた艦娘達も、各々がドラム缶を携えて工廠へと上がった。
「飛鳥せんせー、遠征部隊、来ましたぁ〜」
「ああ、事前に連絡を貰っている。こちらとしても持っていってくれると助かるからな」
間延びした声が聞こえてくる。初めて聞く別の艦娘の声。以前の鎮守府の艦娘達は、私のことを無視し続けていたため、声すらも覚えていない。なので、この施設の艦娘以外の艦娘となると初めての声だ。
持っていってもらう鋼材を運びながら、その遠征部隊を眺める。見たところ、駆逐艦娘4人。2人は黒のセーラー服だが、2人は白のセーラー服にパーカー。皆揃いの月の形をしたブローチを付けていた。おそらくは姉妹。
「雷ちゃん、摩耶さん、1ヶ月ぶりぃ〜」
「久しぶりね!」
「おう、よく来たなお前ら」
間延びした声の艦娘がこの部隊の旗艦なのだろうか。雷と摩耶とも仲よさそうに会話をしている。と、鋼材を運ぶ私と目が合った。途端に目を輝かせて私の方へと近付いてくる。
「新人さんだぁ。あたし、文月っていうの。よろしくぅ〜」
遠征部隊の旗艦、文月。飛鳥医師が言うには、こちらの事情を知る艦娘。
この施設にいるのだから、私もワケ有りであることは察することが出来るだろう。だが、何の偏見もなく接してくれる。それだけで少し気が楽になった。
「若葉だ」
「若葉ちゃん、この前来た時はいなかったよね〜」
「その時は医務室で寝てた。今は回復してこの通りだ」
持っていた鋼材のうち、大物は大発動艇の方へと積み込んでいく。その間に他の3人も私に駆け寄ってきた。新人というのはやはり珍しいらしく、文月も合わせて一瞬で囲まれ、輪形陣で周囲を封じられる。逃げられない。
これだと鋼材の積み込みが出来ないのだが。仕事が出来ないので、手近なところに助けを求める。
「ま、摩耶、助けてくれ」
「鋼材の積み込みはあたしがやっといてやるよ。お前は初めての交流を楽しんどけ」
飛鳥医師や雷までそれを許可するように無言で首を縦に振る。雷に至っては満面の笑みでサムズアップまでしてきた。今回の遠征は、私の紹介も兼ねていたようだ。
「若葉ちゃん、紹介するね〜。あたし達は第二二駆逐隊だよ〜」
「皐月だよっ。よろしくな!」
「長月だ」
「水無月だよ」
私が言えたことではないが、幼い4人の駆逐隊。白セーラーにパーカーが文月と皐月、黒セーラーが長月と水無月。
「ここで新人見るの半年振りくらいだよね。摩耶さん以来かな?」
「そんなに頻繁に増えても困るだろう。漂着した艦娘なんだからな」
「あの嵐はねぇ。水無月達も遠征断念するレベルだからねぇ」
そんなに前からここと関係があるのか。まさかこの4人が雷が来る前に浜辺の清掃を手伝っていたとかか。
嵐のことをそう言えるということは、それなりに近い位置にある鎮守府なのだろうか。まぁこんな辺鄙なところにまで遠征に来るくらいだし、浜辺の清掃を手伝ってくれたほどなのだから、そう遠くない場所からなのだろう。
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