ハーメルン
転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります
#17 お着換え準備
「よーし!今日の宿題は終了!明日も休みだし、これで心配事は無し!」
机の前のディスプレイとにらめっこしていたわちるはそう言うとすぐさま席を離れ、後ろのベッドへと倒れ込んだ。
彼女が格闘していたのは学校で出された課題だ。次の日が休日であるという理由からいつもより多めに出されていたそれを、わちるは休日最後の日にでもまとめて終わらせればいっかなどと考えていた。
だが、わちるの保護者であり、FS所属配信者達のスケジュール管理をしている"室長"と"
白愛灯
(
はくああかり
)
"に初配信までに課題を終わらせた方がいいんじゃないか?と圧をかけられたのだ。
さすがに二日分の課題を半日程度で終わらせるのはなかなかハードかと思われるかもしれないが、それほどでもない。
というのもこの世界では登校というものが存在しない。すべての学生は自宅で授業を受けることが出来るのだ。授業はネットで配信されており、学生であることを証明するアカウントを取得していればいつでも何度でも授業を受けることが出来るし、その授業で出された課題もネットを通してワンクリックで提出することが出来る。授業を聞いていれば難なく処理できる課題を、授業の動画データを流しながら取り組めばそれほど時間もかからず終わらせることが出来るという訳だ。
わちるは楽しいことはめいいっぱい楽しみたい性分であり同時に複数の心配事があるとそちらに気がいって目の前の物事に集中できない性格でもある。
それを自覚していたわちるは室長達の言葉ももっともだと思い、何とか配信前に課題を終わらせようと数時間前から机にかじりついていたのだ。
「でも、最大の心配事はまだ解消されてないんですよね……」
わちるはベッドに横になりながら、小型の情報端末を操作する。
格段に科学技術の進化した時代でありながらも利便性や効率、あるいは慣れという点からスマホやPCと呼ばれるものの形状はほとんど変わっていなかった。もちろんその中身は驚くべき程近未来的な最新技術によって構成されているが。
手になじむ小型の情報端末にダウンロードされているSNSアプリ、メイクトーカーをタップし、自身のアカウントを確認する。
フォローは同じFS所属ヴァーチャル配信者といくらかの同業者のみに限られ、対してフォロワーはすでに一万人を突破しようとしていた。
ヴァーチャル配信者というだけである程度の支援者が付く昨今、わちるはそれに加えてV配信者界隈でトップをひた走るフロントサルベージ所属であるのだ。
どんな新人がくるのだろうという期待と、あのFSの所属だからという安心感がただの一度も配信を行っていない彼女にこれだけのフォロワーが付いた理由であった。
そのことがわちるにプレッシャーとしてのしかかっていた。
「なこそさんも寝子ちゃんも大丈夫って言ってたけど、やっぱり不安になるぅ~~」
ベッドの上でゴロゴロともだえるわちるだが、ふと端末から聞こえてきたコールに反応し、ちらりとメイクを確認する。
【みなさまこんにちは~今日もわんこーろの配信を始めますよ~告知通り13時からの配信になります~ぜひとも犬守村へ帰ってきてくださいね~】
確認した直後わちるはがばっと上体を起こし、端末に表示されている時刻を確認する。
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