4話 カルネ村
モモンガの部屋を開けると、そこには漆黒の全身鎧に身を包んだ戦士の姿があった。その傍らには、一般メイドの姿もある。
「あっ、ウルベルトさん、お帰りなさい。やっぱりその格好の方がしっくりきますね」
そう言いながら、ヘルムを脱ぐと見慣れた骸骨が現れる。
「モモンガさん、そんな装備持ってたんですね。初めて見ました」
「ああ、違います。これ、装備品じゃなくて魔法で作ったんですよ。さっきから、大剣とか使えるんじゃないかと試していたんですけど、全然だめで。ただ、魔法で作りだした装備だったら大丈夫みたいです」
つまり、ゲームの頃と同じ仕様だという事だ。
モモンガと同じ魔法職であるウルベルトもおそらく同様だろう。仕様が変わっているものもいくつかあるというのに、妙なところでゲームと同じ縛りがあるのはどういう事なのだろうか。
「なるほど。ところで、モモンガさん、もう一人この部屋に入れても大丈夫です?」
「? 大丈夫ですけど、誰ですか?」
「パンドラです」
「えっ!?」
「パンドラズ・アクター。モモンガさんが入って良いと言ってるぞ」
驚くモモンガをよそに、廊下に待機させていた人物を部屋に招き入れる。
「我が創造主たるモモンガ様っ! 宝物殿以外の場所でお会いするのはこれが初めてとなりますね。あなた様の被造物たるこのパンドラズ・アクター、ナザリックの非常事態と聞き及び参上いたしましたっ!」
マントをなびかせ、大仰な敬礼のポーズをとりながら部屋に入ってくるパンドラズ・アクターに、モモンガは沈静化がかかっているのかその光景を唖然としながら見ていた。
パンドラズ・アクターの方は、先ほどまでモモンガが確認のため取り出していたであろう装備品に興味を示している様子だ。
そもそも、彼は宝物殿から出たことはなかったため、ここに来るまでの道中もどこか物珍しそうにしていた。
「それで、モモンガさん、パンドラに予備の指輪をあげたりとかできないですかね? どうやら、指輪をもっていないせいである意味閉じ込められている状態なんですよ。まぁ、本人はそう思ってないようですが。とはいえ、今後呼び出すことがある時、一々俺かモモンガさんが迎えに行かなきゃいけないんですよ」
思い出されるは帰還の際、来るときは両手に花だったのが背後に埴輪が増えた光景。はたから見れば、さぞおかしかったに違いない。出来れば、二度とやりたくない。
「ああ、指輪ですね。いいですけど、いいんですけど、なんで今連れてきたんです?」
「外を確認するなら、まず遠隔視の鏡を使ったら良いんじゃないかって話になって、使い方わからないかもって言ったら、マジックアイテムの事なら自分にまかせてくれって言ってきたので」
大体のアイテムはゲームの頃と同じように使えるが、それだって全てが全てではない。後から使い方がわからないとパンドラズ・アクターを呼んでくるよりも、今連れてきて教わった方が早いとウルベルトは判断し、ここに連れてきた。
ついでに、モモンガがどんな反応をするのかも見ておきたかった。
デミウルゴスが、ウルベルトを大事にしているように、パンドラズ・アクターもまた、モモンガを何よりも第一に考えている様子であった。パンドラズ・アクターはウルベルトとモモンガが対立するような事があれば、ウルベルトを切り捨ててモモンガの方につくだろう。
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