6話 親子
「モモンガ様とウルベルト様が護衛も連れずに二人だけで外に出たなんてどういうことなの、パンドラズ・アクター! モモンガ様にもしもの事があったなら、あなた一体どう責任を取るつもりなの」
モモンガから、外への探索に出るためナザリックの防衛を固めるようにと〈伝言〉を受けたアルベドはその言葉に従ったのち、モモンガの自室へと向かった。
そこで出会ったパンドラズ・アクターの自己紹介が終わるや否や、彼女は怒りに声を荒げた。
まだ、外の様子は把握できていないこの現状で、二人だけを外に出すなど、そんな事が許されて良いはずがない。
「私はそのようにご命令をされ、それに従ったまでです」
「だから、それを止めるのがあなたの仕事じゃないのかと言っているのよ! モモンガ様に何かあったら、あなた責任が取れるの?」
「ですから、遠隔視の鏡で様子は確認しております。もしもの事があれば、すぐにでもそちらに向かう手はずになっております」
「見てから行動を起こしたら、間に合わないかもしれないじゃない!」
ヒステリックな声を上げるアルベドにも、パンドラズ・アクターの表情は変わらない。ドッペルゲンガーの彼の顔は、どこを見ているかすらはっきり掴むことはできず、何を考えているのかなど全くわからない。
彼はモモンガが作った存在だという。ならば、もっとモモンガの事を心配しても良さそうなものだと思うのだが、彼は父なる神がそうお望みになったからだと返答をした。
「あなたの仰ることはもっともでしょう、統括殿。しかし、私はモモンガ様の幸せこそを優先したい。あのお方はずっと、他の至高の御方がお戻りになられるのを待っておられた。再び、仲間と冒険に出られる日をずっと夢見てきた。それをお止めすることは、私にはできません」
モモンガの安全よりも、モモンガの幸せを優先するという。
それはつまり、モモンガの幸せとはあの男と一緒にいる事であると、そう言っているのだ。
それが、たまらなく腹立たしかった。
玉座の間にいたその時までは、モモンガはアルベドの事を見てくれていた。それが、第六階層に行き、あの男と再会してからはどうだ、その目線はあの男にばかり注がれている。それが、どうしても耐えられなかった。
「それにしても、統括殿はモモンガ様の心配ばかりされておられますね。まるで、ウルベルト様などは心配するに値しないと言わんばかりに」
しまったと、アルベドが言い訳をしようと口を開こうとしたのを、パンドラズ・アクターが手で制す。
「いいえ、いいえ。お気持ちはよくわかりますとも。そして、あなたのその想いを、告発する気は毛頭もございません」
「それは、あなたにとってもあの男は邪魔な存在、という事で良いのかしら?」
「何度も言っておりますが、モモンガ様の幸せこそが私が望むもの。私は、至高の御方の姿を取ることはできますが、結局は本物ではない。モモンガ様のお心を真に癒すことが出来るのは、本物の至高の御方々でしかありえない。ですから、ウルベルト様が、モモンガ様の望まれるように、このナザリックに居続けていただけるのであれば、私からは文句は何もないのです」
ああ、なるほどと、アルベドはにやりと口角を上げた。
「つまり、ウルベルトがリアルに帰ろうとしているようならば必要ないと、そういう事ね」
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