ハーメルン
痛みを識るもの
Mist forest

 肉体が解け、一瞬の浮遊感と共に現実とは違う空間へと降り立つ。

 見渡す限りの『森』が、視界に飛び込んで来る。

『B級ランク戦、ROUND1。全部隊、転送完了』

 実況担当のオペレーター、桜子のアナウンスが響き渡る。

 今この瞬間、3つのチームは戦いの舞台である仮想の大地へと足を踏み入れた。

『────マップ、『森林A』。天候、『濃霧』』

 桜子が、マップと地形条件を読み上げる。

 それが、始まりの合図。

 正式に、ランク戦が開始された証だった。

 …………七海は周囲を、霧に包まれた鬱蒼と茂る木々を見上げ、湿気でぬかるんだ地面を踏み締める。

 周囲は濃い霧に包まれ、背の高い樹木に囲まれた薄暗い森の中の視界は最悪だ。

 しかし、これは元より自分達が()()()()地形(MAP)

 不安など、今更抱く筈もない。

『位置情報、送信しました』

 志岐の声と共に部隊全員の位置情報が送信され、各々の視界にそれぞれの位置が記された全体MAPが表示された。

 そして、通信が繋がり那須からの指示が聞こえて来る。

『作戦開始よ。予定通りに行きましょう』
『『「了解……っ!」』』

 そして、七海達はその全員がバッグワームを起動。

 深い森の中に、身を躍らせた。





「これはまた、思い切ったマップ選択をしてきましたね」

 実況席でそう口にしたのは、解説に呼ばれた東だ。

 東の言葉を受け、実況担当のオペレーター、桜子が早速反応する。

「ふむふむ、そうですね。『森林A』は傾斜の殆どないマップで、背の高い樹が生い茂っている所為で見通しも悪い。狙撃手にとってはただでさえ面倒な地形である上、天候は『濃霧』に設定されています」
「こうも視界が悪いと、殆ど遭遇戦だね。レーダーで居場所が分かると言っても、森の中だから地面にいるのか、木の上にいるのかもわかんないし」
「レーダーでは、高低差までは表示されませんからね」

 桜子はもう一人の解説者である緑川に合いの手を入れながらもマップ把握は怠らず、解説を進めていく。

 彼女は所属する隊の順位こそ低いものの、オペレート能力は決して低くない。

 自身の持つオペレート能力を最大限に駆使して非常に分かり易い実況を行えているからこそ、『実況席の主』などという異名で呼ばれているのだ。

「このマップだと、狙撃手はその優位を殆ど活かせません。レーダー頼りに撃ち抜く事は出来なくもないですが、難易度は高いでしょう」

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