ハーメルン
痛みを識るもの
Assault unit

「太一……っ!?」
「く……っ! やってくれたな……っ!」

 太一の緊急脱出(ベイルアウト)で動揺した来馬を庇いながら、村上は今の狙撃が来た方向────即ち、茜がいるであろう方向を見据えた。

 乱戦という得意分野(フィールド)を最大限に活用しながら縦横無尽に立ち回る七海を相手にする上で、狙撃手の存在はこの上なく厄介だ。

 七海に翻弄されるあまり、一瞬でも狙撃手たる日浦茜の事を無意識のうちに軽く()()()()()()()()事が悔やまれる。

 茜は堤を狙撃で『緊急脱出』させた後は、諏訪が防いだ一撃を放って以来、全く撃って来なかった。

 最初は単純に乱戦になったが故に介入する暇がなくなったのだと判断していたが、今なら分かる。

 茜は、ずっとこの瞬間を狙っていたのだ。

 即ち、七海が乱戦の中で鈴鳴第一の狙撃手である太一を釣り出すその瞬間を。

 この三つ巴の戦いの中で、狙撃手は『那須隊』の茜と『鈴鳴第一』の太一のみ。

 そのうち片方が落ちれば、主戦場の()()から仕掛けられる手札(カード)がなくなった方が不利になる。

 七海相手に狙撃で仕留める事は難しいものの、それでも牽制や茜への抑えなど出来る事は幾らでもあった。

 それを、今の一撃で覆された。

 認めなければならない。

 日浦茜。

 彼女は、優秀な狙撃手(スナイパー)だ。

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