Perfect game
「……くお……っ!?」
鈍い音と共に、諏訪の生身の身体が『緊急脱出』用の黒いベッドに受け止められる。
目に映るのは、見慣れた天井。
自分が那須にやられて緊急脱出した事を今更ながら実感し、諏訪は溜め息を吐いた。
「ったく、今回いいトコなしだな俺ぁよ。後は笹森に任せるっきゃねぇか」
諏訪はそう呟くとベッドから起き上がり、部屋を出る。
するとオペレートの為機器を操作している『諏訪隊』オペレーターの小佐野瑠衣と堤が諏訪に気付き、声をかける。
「諏訪さん、お疲れ様です」
「おつ~、諏訪さん一点も取れなかったね~」
「ったく、言われなくても分かってるっつーの」
丁寧に諏訪を労う堤とは対照的に軽口でからかう小佐野に、諏訪は苦笑する。
口は少し悪いが、敢えて軽く言う事で諏訪をフォローしているつもりなのだろう。
そのあたりの事が分かるくらいには、小佐野との付き合いは長かった。
「とにかく、もう勝ちはなくなったにしても一発はぶちかましてやりてえからな。笹森を全力でフォローすっぞオラ」
「実際にやるのは殆ど私だけどね~」
「うっせ、気分だよ気分」
小佐野と軽口を言い合った後、諏訪は通信越しに笹森に声をかけた。
「笹森、悪ぃが後は頼んだぜ。一点、取って来いや」
『了解です、諏訪さん……っ!』
諏訪の激励に、笹森は通信越しに力強く答えた。
♦
(…………もうすぐ、日浦さんの背後を取れる)
一人、笹森は森の中を進んでいた。
遠くでは光と爆音が繰り返し響き渡っており、今も尚主戦場では『那須隊』と『鈴鳴第一』が激突しているようだ。
無論、その戦場に加わる気は笹森にはない。
自分が行って、どうこうなる場所ではない事は痛い程理解している。
何故なら、あそこで戦っている人達は皆自分より強い。
NO4攻撃手である村上は言うに及ばず、七海も以前個人戦でボロ負けしているし、那須もあの弾幕を掻い潜って本人に斬り込むのはもう仲間の支援が望めない笹森には不可能だった。
三人程突出した能力は持っていないが、来馬は村上のサポーターとしての能力は決して侮れるものではない。
本人はあまり自分が強いとは思っていないようだが、村上の動きを理解した的確なサポート能力は安定感があり、判断能力もそう悪くない。
正直、村上と来馬のコンビとは正面から当たりたくないというのが本音だ。
それに対して自分は、何か尖った強みがあるワケでもない。
笹森の基本的な動きは諏訪と堤が銃撃している間のシールドでの護衛役、もしくは銃撃している最中に『カメレオン』で接近してシールドを割りに行く事だ。
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