七海とその夜
「……ふぅ……」
照明の落ちた、那須邸の一室。
彼の自室であるその部屋で、七海はベッドに座りながら溜め息を吐いていた。
防衛任務の後、熊谷と茜が那須の家にお泊り会をしに来る事が決まり、賑やかな夕食会が催される事になった。
生憎那須の両親は仕事の関係で不在だったが、彼女達が泊まりに来るのは何もこれが初めてではない。
所謂フリーパス状態であり、那須の両親からはいつでも招いていいと許可を貰っている。
那須もその辺りは分かっているので、遠慮なく彼女達を呼んだワケだ。
夕食会では主に熊谷が料理を作り、肉うどんを中心に各々の好みの品が並んだ食卓となった。
流石に茜の好物のソフトクリームまでは用意出来なかったが、那須の好物である桃缶は元々家に相当数ストックしてある。
その為デザートとして出したのだが、放って置くと延々と桃缶だけを食べている為、他にもガレットやバームクーヘン等、上品なお菓子を並べて皿に取り分けていた。
最初の頃は女子会の空気に混ざるのはどうかと思って遠慮していた七海も、那須達の根気強い要請に負け、今では共に食卓に付き、団欒の一時を過ごしていた。
味は殆ど分からないものの、雰囲気だけでも楽しむ事は出来るからだ。
…………七海は無痛症の治療の為に『ボーダー』に入隊し、専用の痛みを感じるトリオン体の作製には漕ぎ付けたが、全てが元通り、とは行かなかった。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/10
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク