ハーメルン
異世界来たので好きに生きる
九話

ギルドで換金を済ませてパン屋でいくつかパンを買う。
街は変わらず人が多くてうるさい。
果物や野菜と肉を買いそのまま表通りを歩いていくと少し開けた広場に出る。
ここを左に曲がると教会が見える。
宗教には学問的な興味はあれどすがる相手にはならないのでここに来ると少し居心地が悪い。

『シスター、アレ借りていいですか?』

近くにいたシスターに尋ねると彼女は手馴れた様子でどうぞと言った。
持ってきた食材を彼女に渡して裏の礼拝堂に入る。
表は人が多くて落ち着かない為、こちらを使わせてもらうことがほとんどだ。
こっちに来てわりと週一とかで通った教会だからか
顔見知りが多い。
それでも名前は知らないしそこまで干渉されたりもしないので楽である。

軽く祭壇に一礼して傍にあったリードオルガンを開く。
こっちオルガンあるんだと思ったが表の礼拝堂には大きなパイプオルガンもあるしバイオリンもあるらしい。
音楽ってわりとどこか似るのかもしれない。
何度かペダルを踏んでから重たげな鍵盤を押す。
パフパフとした音と重たげな乾いた音が礼拝堂に響く。
教会に相応しくない軽快なメロディがポロポロと巡っては返ってくる。
途中でやめてぐっと手を伸ばし肩を回す。
鍵盤に指を乗せてきらきら星変奏曲をひいていく。
わがままなピアノをのせる様に音を奏れば美しく響いてくれる。
かわいい音がぽろぽろと解けていくようで微笑んでしまう。
しばらくそうやって弾き続けているとコツりという足音がして指をとめた。

「ふふ、相変わらずいい演奏ね」

ここの修道院長であるシスターだ。
ニコニコと柔らかい笑みを浮かべながら彼女は
リクエストする。

「かわいい曲はあるかしら?
この前のころころとした曲がいいわ」

『シスターミアリ…リクエストは受けてません
使わせて貰えるのは有難いですけど…』

少し眉根を寄せるも彼女はニコニコと柔らかい笑みを浮かべるだけだ。
何を言っても無駄なのである。

はぁとため息をついてオルガンに指をのせる。
確かこの前は子犬のワルツだったっけ…
そうして弾き続けるとイライラが消えてすっきりするのだ。
凝った上半身をぐっと伸ばしてオルガンの蓋を閉じる。
茜色の夕日がステンドガラスを通してキラキラと輝いていてホコリと反射して更に幻想的な光景となる。

シスターはいつの間にか消えていた。
ワルツを引いてからすぐ呼ばれていたからいても十数分くらいだろう。
こちらの音楽も綺麗だがどうしても耳に慣れた音楽を求めてしまう。
弾いていたからっていうのもあるんだろうけどやはり
こういうのは聞かれるべきじゃないんだろうなぁ

最後に軽くお祈りをする。
といっても格好だけで心の中ではあの子供たちは生きてますよという報告とここの愚痴である。
二分ほど心中で喋ると立ち上がって一礼して礼拝堂を出る。
遠くから子供の声が聞こえる。
まぁ女性修道院だし孤児院でもあるらしいから思ったよりずっとミアリさんも大変なんだろうな。

ここから外区まで帰るのだるいなと思いながら歩き出すと背後から下手くそなオルガンの音が聞こえた。
複数の子供の笑い声と情けない声も。

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