蝶屋敷
柱合裁判は終わった。
結局、あの後反対意見が出なかったことにより、竈門炭次郎と竈門禰豆子は鬼殺隊で保護されることとなった。
鬼殺隊始まって以来、前代未聞の「鬼の隊士」が認められたのである。
もちろん、禰豆子が鬼である限り、二人には今後も厳しい監視が付き纏う。
他の隊士にもよく思われない。二人はようやくスタート地点に立つことができたのである。
その炭治郎は、先ほど「あの傷だらけの人に頭突きをさせてくださいっ!」と喚いていたが、時透に石をぶつけられ隠によって蝶屋敷に連れて行かれた。
どうやらよほど禰豆子を刀で刺されたのが許せなかったらしい。耀哉の話を遮られた時透に止められるまで、縁側の柱にしがみ付いて最後まで必死に不死川に頭突きをさせてほしいと耀哉に懇願していた。
先の任務で怪我をしていたと言うこと、伊黒に押さえられながら全集中の呼吸を行使したためそれ以上抵抗はせず、箱に入った禰豆子と共に蝶屋敷預かりとなった。しばらくの間は蝶屋敷で療養をすることとなるだろう。
「くっ、はははっ。なかなか見所あるな、俺達の弟弟子は。な、義勇」
「ああ」
ギンが義勇にそう言うと、話を聞いていた不死川が舌打ちをした。
「何が見所があるだ鹿神テメェ」
「鬼より恐ろしい風柱に喧嘩を売れる奴は早々いない。度胸だけなら一人前だ。お前もそう思わないか、伊黒」
「思わないな思えないな。そもそも俺は鬼が大嫌いだ。鬼を連れた隊士などもっと嫌いだ。度胸があろうがなかろうが、俺は奴を認めはしない」
不死川と伊黒はまだ納得がいかないのか、不満げな表情を隠そうともしない。それと対照的に炭治郎達に好印象を持っていたのは、煉獄と宇髄だ。
「うむ!だが鬼舞辻を倒すと大声で言うとは、よい心がけだ!さすがギンと冨岡の兄弟弟子だ。見所がある!」
「ああ。地味なヤローだが派手なことを言いやがる。根性もありそうじゃねーか」
「そうだね。私も炭治郎には強く期待している。他の柱の皆も、彼と禰豆子には気を掛けてやって欲しい」
「「「御意」」」
「それじゃあ、先ずは……ギンの今回の旅の報告をしてもらおうか。さっきの"腐酒"についてもね」
「ん」
ギンは頷くと、先ほど禰豆子の前に出した"腐酒"が入った瓶を取り出した。
「まずこの"腐酒"だが、これは稀血の成分と良く似ている。先日、鬼にされたばかりの雑魚鬼にこれを投与してみた結果、急速に力を付けて血鬼術を使えるようになるほどだった」
「なんと。それほどまでに……強力な液体とは……。鬼舞辻や鬼共がこれを知っている可能性は?」
岩柱の悲鳴嶋は眼から涙を零しながらギンに問いかけた。ギンの話が正しければ、腐酒を一滴摂取すれば鬼は稀血の人間を喰った時かそれ以上の力を得ることができる。たった一滴で稀血の人間一人分の栄養価なのだから、それを一口、盃一杯分も飲めば、更に強力な鬼が生まれる危険性がある。
「結論から言えば、ある」
「……では対処法は?」
「そこは今の所、研究中だ。鬼が腐酒を摂取するだなんて、今まで見た所がないしな。そもそも、この腐酒自体がかなり希少なんだ。光酒を採るよりも難しく、出現条件も誰にも分からない。俺も偶然山奥で見つけられたが、小瓶一つに入れるのが精いっぱいだった。鬼舞辻が見つけたとしても、鬼共全員がこれを飲んでいる、ということはありえないが……十二鬼月はこれを飲んでいる可能性がある」
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