雄英体育祭(5)
「ダメっすか?」
「ダメだよ」
リカバリーガールの保健所にあるベッドで横になりながら受けたのはドクターストップ。ごめん爆豪、無理そうだ。
「どうしてもダメですか?」
「あんた、自分で動くのも厳しいんだろう?そんな状態で試合してどうなるかなんて自分でわかるはずだよ」
確かにわかっている。今の俺は上限解放できるとしても40が最大。しかも既に体がガタガタなので10分間持つかもわからない。そして個性が切れた時には動くのが厳しいどころか動けなくなることは間違いない。上限解放したとしても痛みが消えるわけでもないし、勝てる確率はほぼ0%。
「焦る気持ちもわかるさ。でも、今無理して体を壊しちゃ本末転倒だ」
「俺も試合が終わるまではそう思ってたんですけどね」
ただ、あんな戦いたそうな爆豪を見てしまったらそりゃやる気出る。プロヒーローへのアピールだとかそういうのを無視してでも戦いたいと一瞬でも思ってしまった。よく考えれば一人でもプロヒーローの目にとまればそこから力を伸ばしていけばいいわけで、大勢のプロヒーローの目にとまる必要はない。いや、とまった方がいいんだろうけど、今の俺にはそれよりも優先したいことがあるわけで。
「それでも戦いたいんです。自分の限界はわかっています」
「こっちは親御さんからあんたたちを預かってる身だよ。もしものことがあったら顔向けできやしない」
「その点は心配いりません!」
どうにかして折れてくれないかと懇願していたその時、一人の男が扉を開けて勢いよく部屋に飛び込んできた。この暑苦しさ、そしてプロヒーローが集まる雄英体育祭。そして今部屋にいる俺、そしてこの声。様々な条件から導き出されたその男の正体は、ものすごく見覚えのある人物で、というか身内だった。
「父さん!?」
「いかにも!俺は久知想の父さんである久知極!そしてまたの名を根性ヒーロー『ノーリミット』!」
俺の父親であり、プロヒーローでもある久知極。本当に俺の親なのかと疑うほど暑苦しい男である。
「リカバリーガール、親御さんである俺は許可します!こいつがまだ戦えて、戦いたいというなら戦わせてやりたい!」
「取り返しのつかないことになるかもしれないよ?」
「そうなりそうだったら俺が全力で止めましょう!ですが大丈夫!こいつは賢い子だ。自分の限界を見誤ることはない!それに」
父さんは俺に向けて暑苦しくサムズアップして、
「もう後悔するようなことはあってほしくないんです。やりたいことはやらせ、そのやりたいことが間違っていると思えばぶつかり、譲れるところを見つける。それが俺たち親子の在り方!そうだろう想!」
「……おう」
「それに、こいつの個性は使えば使う程新たな可能性が見えてくる!それが『窮地』ならば尚の事!こいつの可能性も見るためにも、許可を出してはくれませんか!?」
言って、父さんは頭を下げた。
本当に父さんは暑苦しい人で、俺がヒーローになると言って、その理由も言ったとき「俺は何故あの時無理やり引き離してしまったんだァー!!」と号泣しながら俺に向かって一日中土下座しながら付きまとった後、「お前の夢を全力で応援しよう!」と暑苦しく抱擁された。だから今こうして頭を下げてくれてるんだろう。暑苦しいだけじゃない、いい父さんなんだ。
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