思い返せば、朝起きて、すでに身体が重かった気がする。
朝のHRで軽い頭痛がして、一時限目の授業中にはもう喉がいがらっぽく、飲み込む唾が痛い。
あ、こりゃまずいな。
そう思って休み時間に保健室へ行った。熱を測れば37.8度。
「うん、これは風邪ね。早退してお医者さんへ行きなさい」
保健室の先生の勧めで早退することに決めた。
一旦教室へ戻るも、階段の上り下りで息が乱れる。
どうして熱があるって自覚すると、急に具合が悪くなってくるんだろうね?
荷物を持ち、クラス委員に早退する旨を告げ、僕は学校を出た。
日中は陽が差して結構暖かい―――と思ったとたん、背筋にぶるると悪寒。
こりゃ本格的にまずいな。
ふら付く足取りで、自宅の近くの病院へ。
受付で症状を告げ、検温すれば38.3度。久方ぶりの38度越えだ。
おかげで、待合室で待っている間も、ぼーっとするだけでスマホを弄る気力も沸いてこない。
「喉も赤いし風邪でしょう。お薬を出すので、温かくして安静にしていて下さい」
ぼーっとしたまま診察を終え、ぼーっとしたまま併設の調剤薬局で薬を受け取る。
それから帰り道のスーパーでスポーツドリンクのペットボトルとかを買い込み、どうにか自宅へと帰還したのはまだ午前中だったと思う。
当たり前だけど、誰もいない部屋は冷え切っていた。
こういう時、一人暮らしは辛いと痛感する。
制服を脱ぎ散らかし、パジャマへと着換える。
薬は食後に、と言われたけど、全く食欲がなかったので、とっととスポーツドリンクで流し込んだ。
…やべ、本格的に頭が痛くなってきたわ。
冷凍庫から、しばらく使ってなくてカチコチのアイスノンを引っ張り出してタオルにくるむ。
ぜいぜい言いながら自室のベッドへ転がり込んで、それでもスマホをしっかり持つのを忘れない。
一人暮らしで病気のとき、万が一の生命線はこれだ。
もうその頃には、喉が痛くてコンコンと咳は出るし、頭痛がひどくて目を開けているのも辛い。
それでも最後の気力を振り絞って、メールを送った相手は切歌と調。
『風邪ひいてるから来るな』
でないと、平気で遊びにくるんだもん、アイツら。
それを最後に、とうとう僕は力尽きたらしい。
後頭部は冷たいのに、頭の中が痛みでぐるぐるする。
眠りたいのに痛みで眠れない。
それでもひたすら目をつむっていると、眠ってしまったようだ。
喉の渇きで目を覚ます。
全身にびっしょりと汗。
のろのろと身体を動かして腹ばいになって、ペットボトルから直接スポーツドリンクを飲む。
口の中に熱っぽい膜が張った感じで、味は良くわからない。熱い喉を、生ぬるい感触が流れていくだけ。
ゴホゴホと咳き込む。
今、何時だ? 着換えなきゃ。
上半身を起こした途端、くらっと来た。
そのままベッドへ倒れ込む。くちゃっと溶けて温いアイスノン。
すごい悪寒がする。熱を測らにゃ、と思ったけれど、しまった、体温計はリビングの棚の中だ。
ガクガクと身体が震える。
取りに行こうと思うけど、寒くて寒くて動けない。
身体を丸めて必死で温まろうとするんだけど、震えが治まってくれいない。くそ、なんだか涙まで滲んできた。
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