第3話 朝は戦争
高坂家の朝は騒がしい
「いくぞ、雪穂?」
「いつでもいいよ。」
朝の6時半、俺と雪穂は姉ちゃんの部屋の前にいた。
その理由は至極シンプル。
これから、あり得ないほど朝が弱い姉ちゃんを起こすためだ。
普通に起こしに行っても、布団に引きずり込まれて抱き枕にされるのがオチなのだ。
だから、姉ちゃんをしっかり起こすためにも、こうして毎日二人で作戦を練り、実行しているのだ。
本日の作戦もまさに今、開始しようとしていた。
「よし・・・突入!」
バンッ!!
勢いよく部屋の扉を開け放った。
俺は、中華鍋におたまを激しく打ち付けながら、雪穂はホイッスルを思い切り吹きながらの突入だ!
カンカンカンッ!!ピピピピーッ!!
二つのやかましい音が、姉ちゃんの部屋に思い切り響き渡る。
・・・うるさっ。
実行した本人ですらびっくりの大音量なのだ。
何の前触れもなくこの音を聞かされた当の姉ちゃんはというと
「うわああああああ!?!?」
と、こちらも負けず劣らずの音量で絶叫をあげ、ベッドから転げ落ちていた。
どうやらしっかり起きてくれたようだ。
「早かったね、歴代最高記録じゃない?」
そんな姉の様子を冷静に分析し、そう確認してくる雪穂。
「間違いなく最速だな。ただ、うるさすぎ。」
同じく俺も冷静に、そして素直な感想を述べた。
「う~ん、そうだよね、想像の3倍うるさかったね。」
「やっぱり、何かを得ようとすると、何かが犠牲になるんだな。」
「だね、また作戦の練り直しだね。」
雪穂と本日の反省まで終えたところで、姉ちゃんの部屋から出ていこうとする。
腹減った。
「いやいやいや、ちょっと待ってよ!?何、冷静に分析をして次につなげようとしてるの??普通に死んだかと思ったよ!!」
姉ちゃんが何やらうるさかったが、無視だ。
何せこれは姉ちゃんの為を思っての行動なのだ、文句を言われる筋合いはない。
決して、面白いからやってるわけではないのだ。
同じく無視をしている雪穂も同じ気持ちだろう、双子だから分かる。
ドタドタドタッ
「ちょっと、あんた達!!近所迷惑でしょうが!何考えてるの??」
流石にうるさすぎたようだ、母さんが怒り心頭でやってきてしまった。
「姉ちゃんが悪い」「お姉ちゃんが悪い」
しかしノープロブレム。
双子であることを証明するかのようにきれいにシンクロして長女に指を差しながら、そう言った。
「穂乃果~~!!」
すると思惑通り、母さんは俺たちのその言葉を聞き、矛先を姉ちゃんに向けた。
「理不尽すぎる!?」
姉ちゃんが何か、わめいてたが、そんなことより今は朝ごはんを早く食べることが先決だ。
時間は有限だからな。
そのまま朝一で説教をくらう姉ちゃんを背に、朝食が用意されているリビングに向かった。
「二人とも!もうちょっと普通に起こしてって言ってるじゃん!」
俺たちに少し遅れて朝食の席についた姉ちゃんは開口一番そう抗議してきた。
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