第10話 メッセージ
幕張メッセから出て、少し歩いたところにショッピングモールがある。
親子連れから、中高生、大学生、社会人、おじいさんおばあさん、様々な世代の人で賑わっている。もしはぐれてしまえば、そう簡単には見つからないような人混みだ。迷子センターは大忙しである。
雪ノ下さんがはぐれないようにしないと。
「効率重視でいくか。」
「そうね。」
「じゃあ、俺と小町でこっち。」
「わかったわ。私と大志君でこのエリアを受け持つわ。」
これがボッチの所以か。
案内板を目の前にして、方針を立てている。
「ストップです♪」
比企谷さんが笑顔で、2人の作戦を中止させた。
「何か問題があるのかしら?」
「みんなで回りませんか? そのほうがアドバイスし合えるし、お得ですよ!」
雪ノ下さんは、心底わからないという表情である。
先輩はわかっていて捻くれるのだから殊更に質が悪い。
「各自候補をいくつかリストアップしてから、話し合って決めた方が懸命だと思うのだけれど。」
間違ってはいない。しかし、由比ヶ浜さんへの誕生日プレゼントを決めるだけなのだから、もっと気楽でいいと思う。
「俺と雪ノ下では実力不足だと理解している。人選も完璧だな。」
「……そうね。認めざるを得ないわ。」
さすがシスコン、難癖つけて俺から引き離すつもりか。学校帰りに一緒によく夕飯の買い物へ行くことについては黙っておこう。
「だいじょーぶです。小町にお任せあれです!」
レッツゴー、と言いながら俺たちを先導していく。
道中、パンダのパンさんのぬいぐるみに、雪ノ下さんが猫と同等の興味を示した。なんだか今日は彼女の意外な趣味を知る日である。
「……意外?」
「まあな。」
勢いのままに買ったぬいぐるみを両手でぎゅっと抱きかかえている姿は、普通の女の子らしい。恥ずかしそうに俺たちを見ているのは、気づかれないようにしていた趣味だからなのだろう。
「別に、好きなんだからいいんじゃね。俺の方が口外できないくらいだ。」
パンさんはディスティニーのキャラクターだ。純粋に好きなことが伝わってきて、むしろ好印象である。
「お兄ちゃん、いつも銃でなんかやってるよね。あれって楽しいの?」
「あなた、実は特殊訓練を受けているのかしら?」
「いや、ゲームの話だからな? 俺はゲリラじゃない。」
たぶん、そのネタは2人には伝わらないと思う。
「ゲリラとは、対物テロのことかしら?」
「合っているんだろうが違うぞ、ユキペディアさん。」
「コマンドーという洋画のネタっすね。」
「へぇー」
そんなこんなで、雑談をしながら。
アクセサリーショップや洋服屋が立ち並ぶ場所まで、導かれる。文房具や小物も、そのほとんどが女子向け商品になっているようだ。俺や先輩からすれば、少し居心地の悪さを感じる。
女の子同士で、服を見に行ってしまった。
「……なあ。小町って最近どうなの?」
ベンチを見つけて座ると、先輩がつぶやく。
「どう、とは?」
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