第3話 お義兄さんとの邂逅、そして依頼
ショッピングモールのカフェの1つにいる。
才色兼備な雪ノ下さん、派手な茶髪女子の由比ヶ浜さん、男の娘の戸塚さん、あどけない笑顔が可愛い比企谷さん、絶世の美少女が揃っている場所に、腐った目のイケメンがいて、そこに平凡な容姿の中学男子というわけだ。
俺の場違い感、すごいな。
「それでは。本日はよろしくお願いします、お兄さん。」
「お前にお兄さんと呼ばれる筋合いはねぇ!」
「何を喚いているのよ。」
初対面で威嚇されたんだけど。
雪ノ下さんは大きな溜息をついた。
「でも。比企谷さんと呼ぶと、どちらか区別がつかなくなるじゃないですか。」
「なら。俺のことを呼び捨てしろ。決して小町を小町と呼ぶな。」
思った以上にシスコンなお兄さんだな。まあ、本来年下とはいえ、立場的には年上だし、将来の義兄だし、敬語は続けておくか。
「はい。八幡先輩。」
「せんぱい……おれが先パイ……?」
一度も呼ばれたことがなかったんだな。
なんだかみんなが温かい目で見ていると、比企谷さんは自分よ兄の肩をぐいっと引き寄せてから耳元で話し始めた。
「お兄ちゃんのバカ! ようやく小町のこと小町って呼んでくれると思ったのに!」
「待て、小町。それはお兄ちゃんだけの特権でな。」
なるほど。
ここまで凄まじい兄妹仲だったのか。
勝ち目ないじゃん。えっ、義理の兄妹とかないよね。
「はぁ、この小悪党が怖がらせてしまって申し訳ないわね。」
「いえ。はい、大丈夫です。」
素の顔で、小悪党って雪ノ下さんが呼ぶ。
遠慮というものを知らないらしいが、そういうストレートな物言いはカッコいいと思える。俺にはできないしな。
それにしても、由比ヶ浜さんが気まずそうなのはなぜなのだろう。
「そうそう。このマッ缶は、お近づきのしるしに。」
「あ、ありがとう……俺って、後輩からのプレゼントなんて初めてなんだよ……」
「ヒッキー泣いてるし!?」
「はっ!くっ!こいつの甘さに油断した。こいつコミュ力たけーな、おい!!」
こうやって、義理の兄のポイント稼ぎをだな。
いや、むしろさらに睨まれたけれど。
「さて。そろそろ本題に入りましょうか。」
「はい。まず、自分の姉の名前は川崎沙希と言います。」
反応を見せたのは、雪ノ下さん以外というところか。
「あー川崎さんのこと? ちょっと不良っぽいというか少し怖い系というか。」
「ん? お前、友達じゃないの?」
「友達、ではないかなー?」
というか女の子にそういうこと聞かないでよね、って言葉を続ける。見た目通り広い交友関係を持つらしい由比ヶ浜さんですら、姉とはあまり関わりがないらしい。
やっぱりうちの姉って、ボッチ?
「僕も、川崎さんが誰かと話しているのを見たことがないなぁ。」
ボッチなんだな。
「お姉さんが不良化したのはいつからかしら?」
「一気に帰りが遅くなったのはこの春からですね。まあ、1年前に俺が事故で入院した時に、バイトを始めたみたいですか」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク