料理
「……どうぞ、入ってくれ」
「はい。お邪魔します」
自分の部屋のドアを開けると椎名が部屋の中に入る。しかしコイツ、一応男子の部屋にもかかわらず一切躊躇いがないな。
俺はため息を吐きながら部屋に入り鍵をかけて靴を脱ぐ。夕食を一緒に作ろうと誘われた俺だが、最初は断わろうとした。
しかしその後に理系科目を教えると言われ、教わっている身としては断れなかったのだ。
「意外と物は置いてないですね」
「趣味が読書以外ないからな」
「チェスボードと本がありますが、それは?」
「Aクラスの坂柳に勧められて、やり始めた」
以前椎名が茶道部の方に顔を出している時に図書館で坂柳と会って、チェスをしてボコボコにされて、坂柳にこれから強くなり私を楽しませろと言われてチェスボードと本をプレゼントされた。
最初は面倒だと思ったが、わざわざプレゼントした物を無下にするのもアレだからと時間の合間に色々勉強している。
「ま、今は料理だ。折角和牛ステーキ肉を奮発したし、早く食いたい」
無料コーナーには僅かな挽肉や鶏そぼろ肉しかなかったからな。今日は龍園からポイントが支給される事もあり、つい買ってしまった
そ、ここで携帯が鳴るので取り出すと、スーパーで交渉した先輩から小テストと中間試験の問題用紙と回答用紙の写真が送られてきた。
「椎名。テストのコピーが来たから俺は精査する。先に飯を作っていてくれ」
「わかりました」
椎名から了承を得たので、俺は机の上の中から自分の小テストを取り出し、1問1問確認すると……
(全問一字一句同じか……となるとやっぱりこれが正しい攻略法だな)
俺はその写真を保存してそのまま龍園の携帯にメールで送る。送信完了が告げたのを確認すると携帯をポケットにしまい、キッチンに向かう。そこでは椎名が米を洗っているので俺は野菜を取り出して細かく切る。
「どうでしたか?」
「一字一句同じだった。間違いなく正しい攻略法だな」
言いながらも野菜を切り終えてステーキ肉をフライパンに乗せて焼き始める。ステーキなんて入学して以来一度も食ってないから楽しみだ。ポイントがすごく溜まったら、高級レストランで美味いステーキを食いたいものだ。
「比企谷君、手慣れてますね」
「中学の頃からやってきたからな」
元々妹がやっていたが、修学旅行以降仲違いして俺の家事をやらなくなり、必然的に自分がやる事になったからな。おかげで洗濯や食事などの家事は問題なくこなせる。
そういやアイツ、俺の事をごみいちゃんとか言って見下していた癖に、総武中の受験に失敗してからは覇気が無くなったな。
んで俺が日本トップクラスのこの学校に合格したら両親が今までの態度とは打って変わり俺をメチャクチャ褒めるようになり、それ以降アイツは学校にも行かずに引き篭もるようになったが、今も引き篭もってるのか?
ま、どうでもいいな。俺がどう考えようが3年は関わる事はないし、その時にアイツが引き篭もってようが俺には関係ない。
俺は意識を切り替えて肉を焼く。肉の良い匂いが部屋を充満する。今まで節約してからか食欲を刺激する。
今回は奮発してステーキ肉を買ったが、明日からはまた節約の日々だ。ポイントに余裕があるとはいえ、一度贅沢を覚えてしまうと浪費癖がついてしまい地獄を見るだろう。
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