図書館
ヒソヒソ……
「目立ってますね」
「言うな。はぁ……」
昼休みに図書館に向かっていると周りからヒソヒソと噂される。椎名の言葉に俺はため息を吐いてしまう。
こうなった原因はわかっている。1週間前に坂柳をお姫様抱っこして運んだ俺だが、その噂は全く消えないままの状態で椎名と歩いているからだろう。
俺は以前、椎名に迷惑をかけたくないから距離を置こうと提案したら椎名は「私は噂なんて気にしないです」と拒否した。椎名がそう言ってくれたのは本当に嬉しいが余計に目立ってしまっているのは事実。
何度目かわからないため息を吐きながら図書館に入る。昼休みと放課後に椎名と図書館に向かうのは日課となっていて、放課後はテスト勉強をして昼休みには読書をしている。
図書館では昼休みにも勉強している奴も結構いるが、俺からしたら休み時間にまで勉強はしたくない。つか椎名の教えに加えて過去問もあるから全く問題ない。
そう思いながら席に座ると近くではクラスメイトの山脇と佐藤が座って勉強をしている。龍園はまだ過去問を公表してないからか集中して勉強をしているのがわかる。
俺はそんな光景から目を逸らして手に持つ本を見て読み始める。こうやって静かな場所で本を読むのは最高の時間だ。
暫くの間、本を読んでいると……
「何だと?!」
余りにデカい声が聞こえてきたので顔を本から上げると、龍園がおもちゃにしようとしているDクラスの赤髪がクラスメイトの山脇と向かい合っていた。見れば会長とやりあっていた男もいるが、何をやってんだ?
「本当のことを言っただけで怒んなよ。もし校内で暴力行為なんて起こしたら、どれだけポイント査定に響くだろうな。いや、お前らには失くすポイントが無いんだっけ?って事は退学になるのかもなぁ?」
「上等だ、かかって来いよ!」
山脇の言葉に赤髪はキレるが、アイツはいつの時代のヤンキーだよ?
呆れていると向かい側に座る椎名が立ち上がって騒動の方に向かう。多分注意をするんだろうが、椎名の場合だとクラスポイント云々ではなく静かに本を読みたいからだろうな。
とはいえ無視するわけにはいかないので俺も立ち上がる。あの赤髪の短気っぷりから椎名が危険な目に遭う可能性もあるからな。
「すみませんが、図書館で騒ぐのは迷惑ですから静かにしてください」
「んだテメェは?部外者が口出しするんじゃねぇよ」
赤髪は椎名に凄むが椎名は気にしない。
「そう言うのでしたら外で騒いでください。図書館では静かにするのがルールですよ」
「つか山脇、ここで騒いでクラスポイントが下がる要因となったら龍園に怒られるぞ?」
俺の言葉に山脇が顔を青ざめる。Cクラスの生徒の大半からは龍園の存在は恐怖の対象だから仕方ないだろう。しかし騒動を収めるにはこれが1番だろう。
「わ、悪い比企谷。そっちの不良品どもがギャーギャー煩くてよ」
「んだとこらぁっ!」
赤髪がキレる。山脇の奴、咄嗟だからか知らんが更に挑発してんじゃねぇよ。
「いい加減にしなさい。ここで騒ぎを起こしたらどうなるかわからないわ。それからCクラスって時点で自慢できるようなクラスではないわ」
すると以前話した鈴音(苗字は知らない)って女子が赤髪を止めて、山脇を睨む。まあ確かにCクラスは自慢できないだろうな。
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