赤点
そんな中、由比ヶ浜は現実を認識出来ずにいた。
「なんで赤点の基準を教えなかったし!そうすれば……」
「そういえばちゃんと勉強していたとでも言うのか?おかしな話だ。赤点の基準がわからなくても自分が赤点と言われたら真面目に勉強するのが普通だ」
「そ、それは……納得いかないし!」
「お前が納得しようがしまいが退学は決定した。放課後退学届を提出してもらうことになるが、その際には保護者も同伴する必要があるから、私から連絡しておく」
淡々と由比ヶ浜に報告する茶柱の言葉が、事実として教室内に浸透していく。
「せ、先生、待ってください。本当に由比ヶ浜さんは退学なんですか?救済措置はないんでしょうか?」
「ない。これはルールだ」
「では、由比ヶ浜さんの解答用紙を見せてください」
「構わんが、採点ミスはないからな」
抗議が出ることを予め予想してか、茶柱は由比ヶ浜の解答用紙だけを持ってきていたようだ。平田に解答用紙を渡す。
平田がそれを確認するが少ししてから暗い表情を見せながら、言う。
「採点ミスは……ない」
「納得できたか?由比ヶ浜の赤点は絶対だ」
茶柱は由比ヶ浜に改めて事実を突きつける。
「ま、待って……あたし、次のテストで頑張るから……」
「赤点を取った以上、次はない」
「待ってください茶柱先生」
由比ヶ浜の懇願を茶柱は一蹴すると、雪ノ下が手を挙げる。
「今度は雪ノ下か。何だ?」
「今回の中間試験において茶柱先生はテスト範囲の変更について私達に報告を怠っていました。それにより由比ヶ浜さんが赤点を取ったとなると先生にも責任の一端はあると思います」
「だから由比ヶ浜の退学を撤回しろと?しかし他の生徒はテスト範囲が変わっても高得点を取っている。それにテスト範囲が変わったと言っても授業で習ってない範囲は一切出していない。それを考えると由比ヶ浜の勉強不足、自業自得が赤点の原因だ」
「っ……」
その言葉に雪ノ下は黙り込む。茶柱の言っている事は紛れもなく正論だからだ。事実雪ノ下も朝由比ヶ浜から寝落ちしたと聞いた時は絶句してしまったくらいだ。
「残りの生徒はよくやった。次の期末のテストでも赤点を取らないように精進してくれ。由比ヶ浜は放課後職員室に来い」
「待って!今高校を辞めたらあたし……!」
由比ヶ浜は涙をポロポロ流しながら茶柱に話しかける。しかし茶柱は表情を全く変えない。
「赤点を取ったお前が悪い。辞めた後は私の知る事じゃない」
「やだよぉ!辞めたくないよぉ!うぅぅぅぅぅっ!」
由比ヶ浜は大声で泣き始め、それを雪ノ下が支える。その光景を見たクラスメイトはどうしたら良いのかと苦々しい表情で浮かべる。
と、その時だった。
ガラガラガラ……
扉が開く音が聞こえてきて、皆が一斉に音のした方向を見る。
そこには杖をついた小柄な女子と気怠そうにする長身の女子、明らかにガラの悪い男子と目が腐った男子の4人がいるのだった。
教室に入ると注目される。しかし坂柳は特に気にする素振りを見せずにホワイトボードに貼られている成績表を見て薄く笑う。
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