水泳
先生から了承を得たのでその場で椎名を床につかせて足を伸ばすようにする。
「攣った時の対処法はわかるか?」
「い、いえ」
「つま先を自分の方に引き寄せろ。厳しいなら手伝うぞ」
「お願いしても良いですか?」
「はいよ」
俺は頷いて椎名のつま先を掴み、ゆっくりと椎名の方に引き寄せる。その際に椎名は若干顔が強張るがこればかりは我慢して貰わないとな。
「それにしても意外でした。比企谷君が私を助けてくれるなんて思いませんでした」
「俺もだよ。俺も自分がお前を助けると思ってなかった」
「?助けるつもりがないのに助けたんですか?」
「まあ、な……気付いたらプールに入ってた」
何故か椎名が溺れたのを見たら身体が勝手に動いたんだよなぁ。マジで理由がわからん。俺はそういうキャラじゃないのに。
「不思議なこともあるのですね。まあ何にせよ助けてくれてありがとうございました」
椎名は痛みがあるからか若干顰めているが笑顔を浮かべて俺に礼を言ってくる。
その笑顔に俺は何も言えなくなってしまう。中学時代に戸塚という知り合いがいて、アイツは俺の悪評を知って尚、変わらず接してくれて偶に見せる笑顔が俺をドキドキさせていたが、椎名の笑顔は戸塚のそれと似たような魅力を感じる。椎名の笑顔を見ているとドキドキしてしまう。
まさか椎名は東京都高度育成高等学校において戸塚と同じ癒し枠なのか?
だとしたらマズイ。戸塚の場合、何度か手を出しそうになったが男だからギリギリ手を出さずに済んだが椎名は女だ。下手したら手を出してしまうかもしれない。
念の為、精神修養をしておこう。俺は椎名の足の攣りの回復を促しながらそう考えるのだった。
その後は特に問題なく授業が終わったが、見学していた女子が椎名を抱き抱えている俺の写真を撮って、それをクラス全体に広めてしまいショックを受けてしまった。
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