ハーメルン
忘れられた物語に結末を
四話 血鬼術

【華の呼吸 参ノ型 梅華】

【月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮】

両者の剣技が炸裂した。辺りには斬撃の余波が飛び交い、赤黒く濁った血が散乱した。

しかし血を流したのは幽月だけであった。全身を斬り刻まれた幽月は間合いから逃れるように後退した。そして歯切りをして叫んだ。

「それエフェクトでしょ‼︎なんで当たり判定あるのよ⁉︎」

初めて目にした全集中の呼吸。しかもエフェクトかと思われた月輪には血鬼術というわけか、斬撃の当たり判定があったのだ。

だが叫んだところで無意味。相手は鬼。しかも何故唐突に現れたのかは知らないが十二鬼月の最高位に君臨する最強の悪鬼、上弦の鬼の壱であった。

その迫力は他の鬼とは比較にならないほどに重厚で、周囲の全てを押し潰すほどの威圧感を放っている。それを間近で感じてしまった女隊士は恐怖のあまり動けないでいた。しかも鬼の射程範囲の寸前で。

「戦えないなら遠くに逃げてもらえる?」

「…えっ?」

幽月は後退しながら女隊士の襟を掴んだ。そして身体を捻らせて勢いをつけると森の奥地へとぶん投げてしまった。女隊士は叫び声を上げながら飛んでいく。

これで良し。邪魔者がいなくなったところで幽月は攻勢に切り替えた。

【華の呼吸 肆ノ型 桜華・千華繚乱】

鬼へ踏み込みながら放つ幾千の斬撃。その様は吉野の山に舞い散る桜の花びらの如き。かつて幽月はこの技を会得する為に、春の吉野山に籠り視界に映る幾千の花弁を地に落ちる前に全て斬ったという。

【月の呼吸 陸ノ型 常夜孤月・無間】

対して上弦の壱が放った技は縦横無尽に覆う無限の斬撃。目には目を、剣には剣を、不可避の斬撃の幕に斬撃の幕で対応したのである。

だが斬り刻まれたのは上弦の壱であった。上弦の壱の腕、胸、脚からは血が吹き出す。幽月は振るわれた刀の斬撃に、それに付随する月輪の刃の全てを剣技のみで斬り払ったのである。そしてトドメをさすために首を目掛けて斬り込んだ。

しかし今度は上弦の壱が数多の斬撃から逃れるために後退した。追撃は…できない。幽月は上弦の壱を睨みつけた。一方の上弦の鬼は十分に間合いを離れると斬り刻まれた衣服を少し見つめた。そして幽月を見据えて口を開いた。両者の傷は既に再生していた。

「見事なり。剣戟のみで私を退けた者はそうはいない…。だが、その型に二の太刀はないのであろう……」

図星である。幽月は苦笑いを浮かべながら言った。

「さぁ、どうだろうね。まだ小手調べだったりするかもよ」

嘘である。華の呼吸・肆の型、あれこそが幽月が持ち得る剣技の中で最速最強の技であり、必殺技であった。最終奥義もないことはないが、あれは本当に最終奥義。放った後には刀は塵となり腕が捥げる。相手の底が見えない今はまだ使うべき技ではない。

故に詰みであった。己の剣技ではこの鬼を倒せない。そして、それを見通したように上弦の壱は余裕をかまして問いてきた。

「今宵はあのお方から鬼を狩る鬼を始末せよと言われ駆けつけたが、その正体が鬼殺の剣を振るう逸れ鬼だったとは……。私の名は黒死牟…。お前は何者だ?名乗れ」

その威圧感と構えられたままの刀は名乗らなければ即斬り刻むということを意味してるのだろう。だが刀を受けるにはまだ時間が足りない。鬼に無闇に情報を与えたくはなかったが幽月は名乗ることにした。

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