ハーメルン
21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!
15.St-Knight(対戦型格闘)<5>
「あ、はい。昔、ナイトでオンライン対戦モードの年間王者をしていました」
『うおお! チャンプ! チャンプ!』『チャンプがナイトに帰ってきた!』
「なるほど、チャンピオンってわけだな。相手にとって不足はなし! ……ところでこのゲームはもう引退したん?」
「ええ、今は『Stella』ってMMOにはまっていまして」
『嘘つけ! 恥ずかしくなって逃げたんだろう』『ハラスメントチャンプ!』『ミズキから逃げるな』
「えーと、どういうこと?」
抽出コメントが何やら不穏になってきたので、チャンプに事情を聞く。
「……ええと、王座決定戦でハラスメント判定を受けて失格になったことがありまして、それが原因で引退したって思われているみたいです。本当は『Stella』のサービスが開始したからなんですが」
『マジ?』『『Stella』行けばチャンプに会えるの?』『ミズキから逃げるな』『ミズチみたいなんやな』
ミズキって何?
「ミズキというのは?」
「AIによるハラスメント判定が発動しちゃった相手ですね。すごく扇情的な格好をしていたプレイヤーで、思わずよこしまな考えが……」
「こちらが当時の対戦映像ですね」
ヒスイさんが武舞台に大写しで、動画を流し始める。今とは違い軍服のような物を着ているチャンプと、とてつもなくでかい乳が服からこぼれ出そうなほどの薄着をした、妙齢の女性が戦っている。女性の乳は動くたびにばるんばるんと揺れており、元男として非常に目に毒だ。
そして、チャンプの正拳突きが女性の胸に命中しそうになったところで、AIの判定が下りチャンプは画面から弾き出された。
このゲームは、女性の乳や尻に攻撃が命中したとしても、ハラスメントガードで固い感触しか返ってこない。
しかし、それでもよこしまな考えを持って他者に接触すると、監視AIが試合を中断するようになっているとヒスイさんが言っていた。それで、失格判定となったのだろう。
「……元男としては、ドンマイとしか言えん」
「いえ、もう割り切っているので大丈夫ですよ。正直美味しいネタだと思いますし」
懐が広い……! これがチャンプ……!
『美味しいネタって……確かに笑ったわ』『チャンプ誤解してたよ!』『でもミズキとは決着つけようね』
「では、対戦に移りましょうか。一ラウンド制で時間制限は五分です」
チャンプとの話をぶった切るように、ヒスイさんがそう宣言する。そうだな、雑談ばっかりしていたら、せっかくのライブ配信なのに対戦が全然できなくなってしまう。
「はい、よろしくお願いします」
「よろしく! ……手加減してね?」
「すぐに終わらせないよう注意しますね」
チャンプはそう言ってにかっと笑った。
瞬殺とか動画的にもちょっと困るから、配慮してくれるのは助かる!
『ヨシムネ VS. クルマム』
対戦が成立し、俺達は武舞台の所定の位置に移動させられる。ヒスイさんは舞台袖だ。
俺は腰から打刀を抜き、正眼に構える。チャンプは無手だ。鎧姿だから一応、革製の篭手を装着しているけど。武器格闘のゲームなのに、徒手空拳で年間王者とかすごすぎないかこの人。
[9]前
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:2/5
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク