ハーメルン
21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!
17.ヨコハマ・サンポ(位置情報ARアクション)<2>
「それより、敵が出現したようですよ」
ヒスイさんがそう俺に向けて言ってきた。そうだ、ギガハマコちゃんと雑談している場合じゃなかった。ゲーム中だ。
『あれは製麺ロボット、ギガカットマン!』
「ラーメンはVRで食うのに、なんで製麺ロボットがいるんだろう……」
俺は、目の前に出てきたARのゲームパッドを握り、先ほどギガサクラコさんから入手したパーツを選択する。ヒスイさんの事前説明が正しいなら、これがギガカットマンの弱点のはずだ。
パーツはアイビーム。目からビームである。なんで受付ガイノイドの技が目からビームなんですかねぇ……。
ともあれ、効果は抜群だったようで、一分もしないうちにギガカットマンは沈んだ。ギガハマコちゃんはパーツを新たに受け取っている。
「では、せっかくですので、記念館に寄って一杯いただいていきましょうか」
そうヒスイさんに促され、俺達はヨコハマVRラーメン記念館へと入った。
『わくわく』『ラーメンって料理食ったことないわ』『私、ゲーム内で作ったことありますよ』『検索によると麺料理か……面白そう』
視聴者の期待はそこそこのようだ。
「でも、旧式VRって脳に直接刺激を与える技術みたいだけど、俺達ってガイノイドだから体験できないんじゃね?」
「ミドリシリーズは有機ガイノイドですので、旧式VRも体験できますよ」
「有機だと何が他のと違うのかは解らんが、解った」
うかつに説明を聞くと頭がパンクしそうな話題だったので、俺は話を打ち切って施設の案内ロボットに電子マネーであるクレジットを支払い、VRラーメンを注文した。
席に案内され、すぐさま目の前にラーメンが出てくる。
どんぶりを触ってみると、しっかりと陶器の感触が返ってきて、しかも熱い。すでに俺はVRの影響下にあるようだ。
「これ、椅子がVR機器なのか?」
「いいえ、この施設自体がVR機器ですよ。さ、いただきましょう」
「このラーメン、視聴者にも見えてる?」
「はい、キューブくんにもAR表示されています」
「なるほど。いただきます」
俺はVRで表示されているらしき割り箸を割り、ラーメンを食べ始めた。うん、オーソドックスな醤油味。向かいの席では、ヒスイさんが味噌ラーメンを食べている。
『美味そう』『うちの自動調理器、ラーメンに対応しているかなぁ』『やってるMMOの料理クランにラーメン依頼してみよう』『うちのコロニーはラーメン屋あるみたい。行ってみよう』『腹減ってきた』『満腹度減ってきた』
食べながら周囲を見てみると、他にお客さんはいない様子。ただ、ギガハマコちゃんがAR内でしっかりラーメンを食っていた。芸が細かいな、この観光ゲーム。プレイヤーと一緒に観光を楽しむのか。暴走ロボット退治はどうした。
「ごちそうさまでした。いやー、久しぶりにラーメン食べるからか、かなり美味く感じたよ」
「美味しかったですね。ヨシムネ様と出会う前は、食事など一切取ったことがなかったのですが、最近は美味しい食事にはまってしまいました」
「ガイノイドだって、いろいろ趣味を楽しんでもいいってことだね」
『そもそも食事をできる機能がついている時点で、かなりのハイエンド機』『ソウルインストールするなら、食事機能はほしいよなぁ』『二級市民の配給クレジットじゃ、ゲーム内アイテム購入を相当我慢しないとハイエンド機買えないぞ』『儚い夢だった』
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