ハーメルン
21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!
20.初めてのお料理配信<1>
「お料理するよ!」
『いきなり始まった』『わこつ』『わこつでーす』『いつもの挨拶はー?』『エプロン姿可愛い』
とある日の突発ライブ配信。俺は飛行ロボットのキューブくんにカメラを任せ、キッチンに立っていた。
キッチンは今までほとんど足を踏み入れたことのない、ヒスイさんの聖域だ。だが、俺はこれからここでヒスイさんよりすごいことをする。そう、自動調理器を使わない手料理だ!
「どうもー、21世紀おじさん少女だよー。今回は、リアルの俺の部屋にあるキッチンからお届けしているぞ」
『ほーん、キッチン』『見えるのは自動調理器じゃないような……』『ゲームで見たことのある器具がちらほらと』『まさかマジで料理すんの』『マジか』
「今日はお料理するよ! 炊事は自分の仕事と譲らないヒスイさんとじっくり五時間話し合って、キッチンの利用権を得た俺! 料理をするとなれば、これは配信せざるを得ない! というわけで突発ライブ配信開始したぞ! たまにはゲーム以外の配信もいいよね」
『ヒスイさん……』『ヒスイさんプロ根性ありすぎ』『わこつ。告知ぎりぎりとか困る』『五時間とか吹くわ』『ところでヒスイさんは?』
ヒスイさん、ヒスイさんなぁ。
「キューブくん、ヒスイさん映してあげて」
カメラ役のロボット、キューブくんがその向きを180度変えた。
『ひっ!』『なにやってんですかヒスイさん』『入口から顔半分だけ覗くとかホラー』
「ホラーじゃないよ、由緒正しい古典野球アニメの姉スタイルだよ」
俺はヒスイさんの名誉のために、そう擁護しておいた。
『なにそれ』『どのアニメだ』『その時代はゲームでさえ怪しいのに、アニメとか誰も知るわけない』『姉なのか』
まあ、昭和ネタが伝わるはずがなかった。
それで、ヒスイさんの事情はというと。
「料理をするのは危ないって、ヒスイさんに散々言われたんだ。それで、ただでさえ危ないのに、キッチンに二人もいたら事故が増えるってさ」
『なーる』『ヒスイさん優しい』『それで見守りガールなわけね』『料理って危ないの?』
「そういうわけで、今回は視聴者のみんなと一緒に会話しながらお料理するよ!」
『わあい!』『料理クランの俺に任せろー!』『料理って料理スキルなしでできるもんなの?』『そりゃあ……無理だろ』『生身でやるのは一種の芸術でしょう』『包丁とか使うんだろう。危ねえ』『見たところ、火を使うタイプのコンロだな』『危ねえ!』『ヨシちゃんここは危険だ! 逃げろ!』
「覚えれば危なくないんだけどなぁ。自動調理器ができる前は、人の手で毎日料理していたんじゃないか?」
『多分、家庭用ロボの仕事じゃね?』『メイドロボ!』『一家に一台炊事ロボットがいた時代があったらしい』『となると、人類が料理していたのはロボットが発明される以前の太古の昔……』
「21世紀は太古じゃねえからな!」
そう突っ込みを入れて、俺は早速時間のかかる物から料理を始めることにした。
「最初に料理するのはこれ。お米!」
『なんぞこれ』『白いつぶつぶ』『穀物だな』『惑星テラの主にアフリカおよびアジア圏内で主食として食べられていた稲という穀物ですね。稲を収穫したものを米と言います。これは脱穀したうえで食べやすいよう精米という表面の皮を取り除く工程もなされています』『なに今の有能』『解説すげえ』『ヒスイさんいらず』『いや、このコメントよく見るとヒスイさんだわ』『なにやってんですかヒスイさん』
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