ハーメルン
21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!
21.初めてのお料理配信<2>

 キッチンバットに入った二つの鶏肉を前に、俺は視聴者達と軽く雑談する。

「好物とは言っても自分で作ったことないんだよな。だから、ちゃんと完成するかは不明だ。主任を信じろ!」

『だから誰だよ』『20世紀ネタは通じませんよ、ご先祖様』『検索した。こんな漫画あるんだというか巻数多い!』『俺はヨシちゃんを信じるよ』

「俺がタイムスリップした時点では完結していなかった漫画が、アーカイブでは完結状態で全巻揃っているのはありがたいわぁ。思わず時間加速機能使って読みふけっちゃうよ」

『何それうらやましい』『漫画読むとか、気の長い趣味持ってるなぁ』『週刊掲載漫画楽しいよ』『『Stella』の公式1ページ漫画好き』

 この時代でも、漫画文化は失われていないようだ。古典文学扱いの漫画とかもあるので、少し高尚な趣味になっているかもしれないが。
 さて、料理を再開しよう。

「このバットに入っているのは、ヨーグルトに浸けて二時間経った鶏胸肉だ。鶏皮は剥がしてある。このバットに、醤油を少々混ぜ……醤油っていうのは味噌の親戚で、大豆と塩から作る液体調味料だな。しょっぱいぞ」

 素手でヨーグルトと醤油と鶏肉を混ぜていく。

「ほどよく混ざったら、十分ほど置く。その間に、タルタルソースを作っていくぞ。まずは、ゆで卵から」

 手を洗い、鍋に水を入れ、卵を四つ入れ火にかける。

「ゆで卵はみじん切りにするので、黄身が真ん中にくるよう転がしたりする必要はない。だから、基本放置して作るぞ。さて、ゆで卵ができる間に、包丁のお時間だ」

『うっわ、また包丁か』『怪我しない?』『ゲームの中の刃物は見慣れているのにな』『ゲームの中は痛覚ないからなぁ』『サイボーグにすればリアルでも痛覚軽減できるよ?』

「大丈夫大丈夫。用意するのは、ピクルス……野菜の酢漬けと、タマネギ二玉だ。タマネギは皮を剥いて、半分に切って……後はみじん切りだ!」

 勢いよく包丁を動かし、宣言通りタマネギをみじん切りにしていく。
 うーん、タマネギなのに目が痛くならないぞ。さすがガイノイドボディ。

『あぶねえ!』『これはあかんでしょ』『料理スキルなしでみじん切りかぁ。練習すれば俺にもできるかな』『ヒスイさん止めなくていいの?』『あああああああああああああ』『駄目だこりゃ』

「危なくないよ! そもそもみんな、俺がガイノイドだってこと忘れてるだろ! ミドリシリーズだぞ! 指に包丁当たったところでびくともせんわ!」

『あっ』『あっ』『言われてみれば』『忘れてた』『……そう言えばそうでしたね』『包丁どころかコンロで全身火あぶりになってもダメージなさそう』

 そんなコメントを尻目に、タマネギのみじん切りを終える。
 すると。

「ヨシムネ様」

 背後から、かかる声が。

「お手伝いいたします」

「ああ、助かるよ。手を洗ったら手伝って。みじん切りにしたタマネギをザルに入れて、水にさらしてからしぼっておいて」

「かしこまりました」

『ヒスイさん参戦!』『お前を待っていたんだよ!』『姉妹で仲良くお料理。これを見たかった』『ヒスイさんがんばれー』

 キッチンは広いので、二人で動くスペースは十分にある。
 俺はタマネギをヒスイさんに任せ、ピクルスを取り出した。事前に自動調理器を使って漬けておいた物だ。

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