ハーメルン
21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!
27.Stella(MMORPG)<5>
『Stella』配信初日を終え、その三日後。俺達は朝から『Stella』にログインしていた。
テント泊登山の集合時間までは、まだしばらくかかる。だが、テント泊登山には準備が必要だ。必要そうな道具は昨日までに全て購入したが、登山中に食べる行動食を作ったり、山頂で食べる食事の下ごしらえをしたりしなければならない。
このゲームには、空腹度というパラメーターがある。
食事を取らないでいると変動する数値で、満腹時に100となっているこの数値が下がると、キャラクターは文字通り空腹状態になり、0に近づくにつれてステータスの低下などが引き起こされる。なお、空腹が続いても餓死はしないらしい。
それゆえ、徒歩で長時間登山をする場合、道中で空腹度を回復させるため、行動食が必要となるのだ。
まあ、空腹度がなくても、雰囲気作りのために行動食は作っていたかもしれない。
そういうわけで、俺とヒスイさんは、二人で町の料理人ギルドにやってきて、料金を支払い、キッチンを借りて料理に勤しんでいた。ライブ配信はまだ開始していない。
昨日、町中でジャポニカ米を購入できたので、行動食はおにぎりだ。
白米を炊き、マスの切り身を焼いて具にする。
白米が炊き上がるまで、ヒスイさんと雑談だ。料理スキルが低いため料理の時間短縮をしてくれる技の効果が低く、炊くのに時間がかかるのだ。
「それにしても、プレイヤーの人達はゲームだと高ステータスの超感覚で動いているのに、現実に戻っても感覚がおかしくならないのかが不思議だな」
そんな料理にも登山にもテント泊にも関係ない話題をヒスイさんに振る。これは、前回のライブ配信中にPvPをするチャンプの動きを見ていて思ったことだ。
システムアシストに関係ない部分でも、PCの身体能力は高かった。スキルが育つと、PCは超人化していくのだろう。
「旧式VRの頃はそういった
齟齬
(
そご
)
があったようですが、ソウルコネクト技術が確立してからはログアウト時に魂を肉体に馴染ませて感覚調整できるようになったそうです」
「なるほどなー。魂を扱う科学とか、ぶっ飛びすぎてよく解らんわ」
「これでも、魂の全容は解明されていないのですよ。魂はどこから発生して、どこに消えていくのか解明されていません」
「死後の世界がどこにあるか判らんってことだな」
「そうなりますね。ですので、人工魂の生成には成功していません。人工生命に魂は宿るのですが……。なお、テレポーテーションに必要なソウルエネルギー……超能力の力の源は、ソウルサーバーにインストールされた二級市民の魂から抽出されています」
「うわ、そこだけ切り取ると、すげえディストピアっぽい」
「その分、魂だけの二級市民の方にも、クレジットは配給されているのですけれどね」
「肉体がなくなったら、ゲームの世界で生きるしかなくなるだろうけど、お金がないんじゃゲームも満足にできないか」
棚ぼたでガイノイドボディが手に入った俺は、だいぶ恵まれていたな。まあ、女ボディなのが惜しいところだが。
でも、美少女ボディだからこそ配信でこんなに人気が出たわけで。うーむ、美少年ボディだった場合、配信人気は出ただろうか。
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