ハーメルン
21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!
62.リドラの箱船(サバイバルアクション・農業シミュレーション)<8>
信仰ポイントを溜め人々を解放し、畑を広げさらに信仰ポイントを稼ぐ。
そんなことの繰り返しで、今や村の人口は500人を超えていた。
順調に信仰ポイントは集まり、そして、とうとう女王リドラの解放の時が来た。
箱舟が光り輝き、女王が大地に降臨する。
「よくぞここまで奇跡の力をたくわえましたね。感謝の言葉しかありません」
そう礼を述べてくる女王に向けて、俺は言った。
「よーし、じゃあ明日からの神聖魔法の担当区画を決めようか」
「感動も何もないですね!?」
「いやあ、神聖魔法のスキル上げが、畑の拡張に追いつかなくてな……」
神聖魔法のスキルレベルが上がると一度の発動でカバーできる面積が広がるのだが、今は箱舟周辺の草原を埋め尽くす勢いで畑を広げているのだ。
そんな事情があるのに女王は俺の言葉が気にくわないのか、ぷりぷりと怒りながら言う。
「まったく、民をまとめて祭りを取り仕切る仕事も、私にはあるのですよ」
「まあ今は、信仰ポイントを溜めることに専念しようや」
天のゆりかごで眠る神様を起こすのには、より多くの人々の祈りが必要だ。
人を増やすには、信仰ポイントを使って箱舟から解放してやる必要がある。だが、女王の再生でだいぶ信仰ポイントを消費してしまったので、ポイントはまた溜めなおしである。
信仰ポイントを効率よく溜めるには、神に捧げる農作物の収穫が必要だ。
このゲームは農業シミュレーションだというのに、今はほとんど作物に神聖魔法を使う作業に追われている。なので、あんまり農業をやっている感覚がない。まあ、ぐんぐん育つ作物を見ていると気持ちがいいのだが。
しかし、人の祈りで神の力が増すというのは俺の元いた時代のゲームなどでもたまに見た設定だが、ずいぶんと人に都合のいい仕組みだ。なんというか、神よりも人が優位に立っているというか……。まあ、いいか。
「じゃあ、神聖魔法の担当は俺が普通の農作物をやるから、女王はキメラ作物をやってくれ」
そう俺が言うと、女王は首をかしげた。
「キメラ作物ですか?」
「複数の食材が混ざったような奇妙な作物のことだよ。ブドウイチゴとか、肉の木とか、もち芋とか」
『確かにキメラだわ』『ブドウイチゴとか味が想像できないのに、実際味わってみるとその通りの味なんだよな』『中に麺が詰まっているスイカはびびった』『開発はなんだってこんな奇妙な作物を……』『ゲームの売りになると思ったんだろうか』
味覚共有機能で、キメラ作物は視聴者達も味わっている。まあ、幸い外れ作物にはあたったことがないのだが……。
俺の説明に、女王は「ああ」とうなずいて答えた。
「あれらの植物は、神がアイテムクラフトで作りだした品種ですね。神は新しい種を作り出すのを趣味にしていらっしゃいますので」
『犯人、神かよ!』『神がやったんじゃ、生命への冒涜とかも言えねえ……』『血がコーラの肉食獣とか、なんで作ろうと思ったんですかねぇ』『なぜコーラの実を毒物にした! 言え!』
意外と面白い人なのかもな、神様。でも、コーラの実を即死毒にしたのは今でも許していません。
「それらの作物を祭りで捧げると、神はきっと喜んでくれることでしょう」
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