ハーメルン
21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!
73.未来のお盆<2>

 ヨコハマ・アーコロジーの夏祭り。俺は視聴者と味覚を共有して、屋台の料理を心ゆくまで楽しんだ。
 人間ボディだったら満腹で動けなくなっているところだ。

「だいぶ食べたし、次は屋台で遊んでいこうか」

 俺がそう言うと、ヒスイさんは「了解しました」と言って口元をハンカチでぬぐった。
 遊ぶ屋台はだいたいが景品をもらえるが、荷物を増やすのもなんなので遊ぶだけで景品を拒否しよう。いい物が当たったらそれだけもらう感じで。

「まずは、射的だ!」

「射撃はお任せください」

「そう? じゃあヒスイさんから」

 ロボット店主からコルクガンを受け取り、ヒスイさんに渡す。すると、ヒスイさんは本格的な構えを取りコルクを撃った。しかし。

「むむ!? 真っ直ぐ飛ばないですね」

 見事に失敗していた。

「あはは、そりゃあ真っ直ぐ飛ばないように作られているからね。基本変な方向に飛ぶけれど、偶然真っ直ぐ飛ぶことを祈るみたいな遊戯だよ」

「ここは、屋台プログラムをインストール……プログラムがありませんね」

「屋台の遊びに専用プログラムを作る人はいないでしょ……」

 ヒスイさんの言葉にあきれて、俺はそんな突っ込みを入れた。
 ヒスイさんは悔しそうな顔をして残りのコルクを撃っていく。だが、全て外れた。

『まさかの敗北』『さすがじゃないですヒスイさん』『ミドリシリーズにもできないことってあるんですね』『銃の癖を見抜くくらいやってくれると思ってた』

 辛辣な視聴者コメントがヒスイさんに突き刺さる。
 がっくりとうなだれるヒスイさん。仕方ない、俺が仇を取ってやるか。

「おっちゃん、もう一回ね」

 そう言ってクレジットを支払い、銃を受け取った。
 そして俺は銃を右手に持ち、手前の台から右腕を伸ばす。さらに、台に半身を乗せてより腕が前に行くようにした。

『ありなのかそれ』『的が遠いなら近づけばいいじゃないの精神』『ずるくない?』『店長の判断はいかに!?』

 キューブくんのカメラとヒスイさんの視線が店長ロボットの方を見る。

『セーフですヨ』

 よし、判定が下った! 撃てー!
 小気味よい音を立ててコルクが飛び、景品の一つに命中した。しかし、倒れない。

「ああ、惜しい!」

「あれ、今のは命中ではないのですか?」

 悔しがる俺に、ヒスイさんが不思議そうに聞いてくる。
 そこで店長ロボットがそう言う。

『景品を倒さないと駄目ダヨ』

 というわけだ。俺はコルクを銃口に詰め、もう一度挑戦する。すると、今度は見事に的の箱が倒れた。

「いよっし!」

 ガッツポーズを取る俺。
 すると、周囲で見守っていた人達から拍手が飛んできた。

「あ、どうもどうも。配信中でお騒がせしております」

 俺は周囲に向けてぺこぺことお辞儀をした。

『ヨシちゃんの知名度向上のチャンス!』『ほら、宣伝して!』『いつもので!』『早く早く』

 くっ、やるしかないのか!

「どうもー、21世紀おじさん少女だよー。普段はゲーム配信をしているから、気になった人はチェックしてね!」

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