ハーメルン
21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!
8.-TOUMA-(剣豪アクション・生活シミュレーション)<5>
「攻撃範囲……制空圏も広いな。強敵だ。でも……ヒスイさんよりは弱い!」
俺は相手の体勢を切り崩し、一太刀、一太刀と一つずつ確実に、何度も斬りつけていく。その筋骨隆々の巨体に相応しく、生命力は高いようだ。
「実況している余裕がない!」
「頑張ってくださいね」
それでも、斬りつけるたびに相手の動きは悪くなっていく。そして、戦いが始まってしばらく、魔王はとうとうその場で膝を突いた。
『やはり、剣の腕はおぬしらの方が上か……』
「ヒスイさんが参戦していないのに、おぬしらって複数形なの、ゲーム特有の理不尽さを感じる」
「高度有機AIサーバを使っていなくても、ゲーム内蔵の汎用AIでそのあたりの状況判断はできるはずなんですけれどね。妖怪に高度な会話AIは使っていないのでしょうか」
「ラスボスなんだから、ちょっとリッチなAIにしてくれてもいいだろうに」
『だが、まだ我は負けぬ!』
「お、第二形態でも来るか?」
「ラスボスの変身は、古典ゲームから連綿と続く様式美らしいですね」
魔王は立ち上がると、骨肉がうごめくような鈍い音を立てて変形を始める。やがて三メートルほどの高さの身となった。さらには背中から二本の腕が生えてくる。そして刀を持っていないそれぞれの手の指先から黒い炎が噴き出し、刀の形を取る。
『さあ、殺し合おうぞ!』
「やってやらあ!」
俺は早速、第二形態魔王に躍りかかった。切り結ぶことしばし。俺は、一つの事実に気づいた。
「あんまり……強くない!」
「背中の腕が全く役に立っていませんね。これはおそらく……仲間NPCに囲まれた場合に本領を発揮する形態なのでしょう」
「そんなオチ!?」
俺は巨大化して隙が前より大きくなった魔王に、打刀を何度も叩きつける。
目が第一形態の太刀筋に慣れていたので、今の大雑把になった第二形態は怖くもなんともない。
「ただのカカシですな」
「余裕ができたとたん大口を叩くようになるのは、実況あるあるでいいんでしょうか……」
そして、魔王は力尽き、その巨体を道場の床に倒れ込ませた。
『見事なり……よくぞ我を打ち倒した……我が目は曇っていなかった……』
「実は自分を倒してほしかった系ラスボス? もっと純粋悪っぽい方が好みなんだけどなぁ」
「養父だった時点で妖怪退治を私達に依頼していましたし、元々妖怪退治側に理解があったのかもしれませんね」
『おぬしらが……黒き炎に打ち勝てることを……地獄から祈っておるぞ……』
「ん?」
倒れ伏した魔王の外皮がひび割れていく。すると、ひび割れの隙間から、黒い炎が吹き出してきた。
「おっおっ、第三形態?」
「ラスボスとは別の意思を持つ最終形態。これもまた古典的な様式美ですね」
ひび割れは魔王の全身に走り、炎の勢いが激しくなる。そして炎は……爆発した。
突然の爆発に、俺は全身を衝撃に打ち据えられ、激しく吹き飛ばされた。
「ぐええっ!」
あまりの衝撃に、俺の視界は暗転した。
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