ハーメルン
我らが帝国に栄光を!
改変をはじめよう

 リヒターフェルデにある帝国高級幼年士官学校は、その名の通りに幼い頃から選抜された男子に、将来における将校候補として専門教育を施す士官候補生学校だ。
 制度的には誰でも入れることになっているが、実際に入学する者は貴族の子弟達であった。
 そして、幼年士官学校卒業後は士官学校へ進み、その後は軍大学へ進学し、卒業後に将校として配属される。
 前世における士官学校や陸軍大学とやっていることはほぼ変わらず、ヴェルナーにとっては学業に関しては片手間でできることだった。
 
 なお、それを片手間と言えるのは本人だけであり、周りから見れば色んなことを同時並行している彼は超人的な努力をしているようにしか見えず、驚きしかなかった。
 
 ともあれ、ヴェルナーは幼年士官学校において、常に首席であり続け、更には前世と同じように戦争研究会というものを立ち上げた。
 あのヴェルナーが立ち上げた研究会ということで、多くの生徒達が興味本位で加入したが、それは彼らにとって非常に大きな衝撃を与えつつも、有益であった。

 戦争研究会は経験も踏まえたヴェルナーの問題提起、それに対し彼なりの回答を示しつつ、生徒達が議論を行うものだ。
 教官達も見学したが、彼の問題提起と回答は幼年士官学校の生徒がするようなものではなく、それこそ参謀本部勤務の将校がするようなものであった。
 しまいにはヴェルナーは独自の戦略理論を提唱し始め、それに関する幾つもの論文を書き上げ、教官達に相談してくる始末だ。
 当然教官達には何とも言えない為、彼らはそれを複写し、各々が仲の良い同期達にそのまま相談するしかなかった。
 


 ヴェルナーが卒業後も幼年士官学校には戦争研究会が存続し、伝統として受け継がれていくのだが、これもまた前世と同じことであった。

 
 そして、ヴェルナーは士官学校へと入学するのだが――







「……有名人を出迎える対応としては正しいが、入学する1人の生徒を出迎える対応としては駄目だろう」

 士官学校の教官であるゼートゥーアは、正門前に立ち並ぶ多くの教官達、そして教官達の後ろから遠巻きに見ている在学生達を見て、そう呟いた。
 今日、やってくる新入生は1人だけであり、スムーズに入学ができるよう配慮された結果だ。
 その1人以外の新入生がやってくるのは明日であった。

 とはいえ、ゼートゥーアとしても気になっていた人物だ。
 幼年士官学校には彼の同期であり、友人であるルーデルドルフが教官として在籍していた。
 彼から色々と聞いていた上、幼年士官学校の生徒が書いたとは思えない論文を彼は複写してゼートゥーアに寄越してきた。
 それだけで新入生がとんでもない輩であることは明らかだ。
 
 
 更にそれだけではなく、その新入生は昨今の飛行機ブーム、自動車ブームの火付け役だ。
 彼は二足の草鞋を履いた状態だが、学業を決して疎かにしていない。
 幼年士官学校を首席入学し、在学中は常に首席であり続け、そのまま首席で卒業したのであれば文句も言えない。

 だからこそ士官学校においても、兼業することが許されている。
 無論、そこには彼の父親が退役したとはいえ少将であるということも影響しているだろうし、兄もまた士官学校において首席でこそなかったものの、上位の成績で卒業していったことも影響しているだろう。

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