一話
転生特典は最高だが、転生先は最低だった。
俺、五月女頼人の現状は上の一文に尽きた。
俺は二次小説やライトノベルでお馴染みの、一度死んでアニメやゲームの世界に転生した「転生者」だ。
前世の俺の名前や死因は思い出せない。思い出せるのは今の世界に転生する前に、正体不明の光の玉に話しかけられた光景だけだ。
その光の玉はまるで機械のようにカタコトで話しかけてきて聞き辛かったが、話をまとめるとどうやら俺は偶に産まれる特殊な魂の持ち主らしく、特殊な魂の持ち主は転生の輪に還ることなく別の世界に転生する事がこの世界のルールらしい。
そして光の玉の説明によれば俺は転生先の世界と転生特典を自由に選べるのだが、転生先の世界をランダムにすればその分、転生特典が強力になるらしく、それを聞いた俺は迷う事なく転生先の世界をランダムにした。……それが後に致命的な失敗になるとも知らずに。
転生特典なのだが、子供の頃から○ョジョのファンだった俺は○タンド能力のような使い魔を創り出す能力を望み、その使い魔の外見や能力を決めてから俺は、五月女頼人として今の世界に転生したのだった。
転生した俺は最初、前世の記憶を忘れていて、思い出したのは転生特典で得た能力に目覚めた中学一年の夏だ。
能力に目覚め、前世の記憶を思い出した俺は「スタン○使いみたいだ」とはしゃいでいたが、はしゃいでいられたのはほんの僅かな間だけだった。俺の能力を知った両親は大慌てでどこかに電話をすると、その翌日に俺は強制的に全寮制の学校に転校させられたのだ。
俺が転校させられた学校の名前は「五車学園」。
そう、あの「対魔忍アサギ」で対魔忍を育成する為の学校だ。……って! ふざけるなよ!
何で「対魔忍アサギ」の世界!? 確かに転生先の世界はランダムにしたけど、よりにもよって「対魔忍アサギ」の世界に転生するなんてどれだけ運が無いんだよ、俺!?
前世でソーシャルゲームの「対魔忍RPG」で遊んだ事があるので、その原型である「対魔忍アサギ」の事はよく知っている。内容を簡単に説明すると、近未来の日本で主人公のアサギを初めとするヒロイン達が様々な形で陵辱されるという十八禁ゲームだ。
そして対魔忍はいわゆる現代忍者で、どれも超能力みたいな強力な忍法を使えるのだが、どいつもこいつも敵に正面から突っ込む事しか知らない脳筋ばかり。対魔忍シリーズに登場するヒロイン達を初めとする対魔忍は全員、敵の罠にあっさり引っかかって即死か陵辱ルートに一直線という流れなのである。
そんな対魔忍を育成する学校に転校? それって俺も対魔忍になるってこと? 影で「肉オナホor肉バイブ」、「ネトラレの宝庫」とか言われている対魔忍に? ………正直な話、全力で遠慮したい。
しかし俺を五車学園に送りこんだ今世の両親は、俺が対魔忍として活躍する事を望んでいるみたいで、とても「対魔忍になりたくないです」とは言えなかった。更に言えば五車学園を退学すると、国の機密である対魔忍の秘密を守る為に、退学者には国から何らかのペナルティーを受けるらしいので、俺には最早「対魔忍にならない」という選択肢はなかった。
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