ハーメルン
蜘蛛の対魔忍の受難
六話

「ちっくしょおおおっ! 覚えていろよあのハゲェッ!」
 
 俺は夜の街を怒声を上げながら全力疾走していた。何故そんな事をしているのかというと、追手の魔族から逃げる為である。
 
 今回の任務はいつもと同じ偵察任務だった。魔族の武装勢力のアジトへ、強襲役の対魔忍の先輩方が仕掛ける前に電磁蜘蛛を使って偵察任務を行い、詳しい敵の戦力を調べるといういつも通りの偵察任務だ。
 
 そして偵察を行うとやっぱりと言うか、事前情報よりも多くの魔族がアジトにいた。それを報告すると案の定、強襲役の対魔忍の先輩方の一人、スキンヘッドで筋骨隆々の対魔忍が「その程度の数、何とでもなる」と言って単独で魔族のアジトに突入、そして必然と言うべきかそのスキンヘッドの先輩はあっさりと魔族に捕まり輪姦されてしまう。
 
 このいつも通りの対魔忍の負の流れに、俺とさくらは揃って頭痛を覚えて額に手を当てたのは仕方のない事だろう。
 
 しかもそれだけならまだいいのだが、あのスキンヘッドの先輩、あっさりと俺達の事を喋ってしまい今回の任務は失敗。俺達は追手の魔族から逃げる為にその場を離れ、今に至るというわけである。
 
「全くさぁ! いくら俺が偵察をしてもそれを聞いてくれなかったら意味がないじゃないか! 自分の実力に自信を持つのはいいけど、相手との戦力差を考えろよな!」
 
 俺は一人で走りながらこの様な事態を引き起こしたスキンヘッドの先輩に向かって不満を口にする。追手の魔族達の動きが予想以上に速かったせいで、今俺はさくらや他の対魔忍の先輩方とはぐれてしまったのだ。
 
「大体! 何で偵察をするのが突入する直前で一回だけなんだよ! こういうのは事前に何回も偵察をして情報を集めてするべきだって、報告書に何度も……げっ!?」
 
 スキンヘッドの先輩だけでなく、依然として出たとこ勝負で任務を行わせる対魔忍の上層部への不満を口にしながら走っていると、運悪く袋小路に迷い込んでしまった。そして壁を登って逃げようとすると、俺が来た道から十人程のオークがやって来て逃げ道が塞がれてしまう。
 
「ゲヘヘ……。見つけたぞ」
 
「あの雄豚と似た様な匂いがする……。服は違うがお前も対魔忍だろう?」
 
 オーク達が何やら嫌な気配を感じさせる声音で話しかけてくる。そしてオーク達が言う雄豚というのは、恐らく捕まったあのスキンヘッドの先輩の事だろう。
 
「グフフ……。それにしても中々可愛い顔をしているじゃないか」
 
「そうだな。あの雄豚は趣味じゃなかったが、こいつならヤレそうだ」
 
 ……………!?
 
 今のオーク達の言葉を聞いた瞬間、俺はかつてないほどの悪寒を感じた。この悪寒は一体何かと思った俺はオーク達を見て、悪寒の正体に気づいた。……気づいてしまった。
 
 
 俺を見るオーク達の視線にある「熱」が籠っており、更に全員が股間を膨らませている事に。
 
 
 ここまで言えばお分かりだろう。つまりこのオーク達は俺を性の対象と見ていて、あのスキンヘッドの先輩同様の事をしようと考えているのだ。
 
「………」
 
 オーク達が俺を性の対象に見ているのを知って、俺の中で「プチン……!」と何かが切れる音がして、俺はある行動を起こした。
 
「観念しな。大人しくしていたら命までは……!?」

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