彼は孤独少女に協力する。
「黛君、一緒にお昼を食べましょう」
衝撃のホームルームから授業を挟み、昼休みになると堀北が柚椰のところにきてそう言った。
彼女の発言にクラスの空気が固まる。
今まで女子が誘おうが素気無く断ってきたはずの堀北が自分から、それも男子を誘うという光景。
それは衝撃以外の何物でもなかったのだ。
「ま、まままマジかよ!?」
「堀北が誰かを昼飯に誘うなんて!?」
「もしかして綾小路君じゃなくて黛君狙いなの!?」
「まさかの三角関係!?」
男子も女子も今目の前で起こっていることを処理できていないのか混乱している。
「うん、いいよ。どうせなら綾小路も誘うかい?」
「彼は他の男子たちと食べるでしょう。それに……今日は貴方と二人きりがいいのだけれど」
「はぁぁぁぁぁ!?」
「黛の野郎、櫛田ちゃんと仲良いだけでなく堀北にまで手出してんのか!」
「堀北さん積極的~!」
「まさか櫛田さんも入れた四角関係ってこと!?」
堀北の爆弾発言にこれまで以上にざわつく野次馬たち。
男子は柚椰が櫛田だけでなく、堀北にも手を出していると思い込んでいる。
女子に至ってはドラマの観過ぎと言わざるを得ない妄想を爆発させている。
「んー、そうか。じゃあ行こうか。……聞きたいことがあるんだろう?」
「──! ……えぇ」
囁かれた最後の言葉に堀北は一瞬驚いたが、直ぐにいつも通りの涼しい表情で応じた。
彼女は柚椰の三歩後ろを歩く形で食堂へ向かう。
二人は足早に食券を買い、料理を受け取ると空いている席へと座る。
「それで、何が聞きたいのかな?」
堀北は真剣な顔で柚椰を見た。
「朝、貴方はクラスポイントの内訳からクラス分けの仕組みについて分析してたわよね? そのことについて詳しく話を聞きたいと思っていたの」
「なるほどね。その顔を見る限り、君は納得がいかないんだろう? 成績が良いにも関わらずDクラスに配属されたのは一体どうして、と」
「その通りよ。あの変人はともかくとして、高得点を取った私が何故Dなのか。貴方だって……満点、だったみたいだし」
堀北は心底悔しそうに柚椰を睨んだ。
「そういえば俺のほうが成績上だったわけだけど、友達お試し期間はどうする? 俺としては堀北とは今まで通り友達でいたいと思っているんだけど」
「そんなことは今どうでもいいでしょう。私が聞きたいのは──」
「友達なら何でも答えるんだけどな。残念だな」
堀北を遮るように、柚椰はわざとらしくそう言って笑った。
その小憎たらしい態度と笑顔により一層悔しさが募る堀北。
「くっ……! どうしても私を友人にしたいのね」
「どうする? 堀北が嫌で嫌で仕方ないというなら俺も無理強いはしないけど」
「別に嫌ではないわ……黛君のことは……少なくとも他の人よりは良く思っているわよ」
目を逸らしながら堀北はポソリとつぶやいた。
彼女はそのままチラチラと柚椰を見ていたが、やがて大きく咳払いをするとキリリとした表情を作った。
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