彼らは今一度説得を試みる。
櫛田にとって、柚椰はやっと出会えた同類であり仲間なのだ。
つい本性を出して会話をしてしまうのも仕方ない。
「一緒にいて楽しいと思ってもらえるのは嬉しいけど、それで周りにバレたら本末転倒だよ?」
「だからバレないように黛君がちゃんと守ってよねっ」
「それは櫛田次第だね。君が俺に従ってくれる限り、俺も君を裏切らないし手放さない」
「──! じゃあ、私がちゃんと言うこと聞いてれば、黛君は私の味方になってくれるの?」
「勿論。昨日言っただろう? 俺は君のことを1番有能だと思っている。優秀な君を手放すわけがないじゃないか」
「じゃ、じゃあ、もし私と堀北さんが対立したら? それでも私の味方になってくれる……?」
上目遣いで櫛田がそう尋ねた。
彼女は、柚椰が肯定してくれることを期待しているような、どうか肯定してくれと懇願しているような目をしている。
そんな彼女に対して、柚椰が返す言葉はただ一つ。
「あぁ、もしそうなったとしても、俺は櫛田の味方だよ」
「っ……! そっか、えへへ」
もし仮に櫛田と堀北が対立するような状況になったとしたら、柚椰は櫛田に付く。
これは彼が彼女を従えたときから決めていたことだった。
櫛田桔梗という人間は他人から求められることを何より悦としている。
それと同時に、彼女は誰かの一番になることを求めている。
誰かに大切にされることを心から願っている。
柚椰はそれを理解しているが故に、彼女の望む答えを投げたのだ。
(それに堀北が今の夢を目指すなら、櫛田程度は踏破してもらわないと困るからね)
Aクラスに上がるという堀北の夢。
それを実現するならば、クラス全体の力も勿論だがそれ以上に彼女自身が強くならなければいけない。
坂柳有栖という怪物がAクラスにいる以上、今のままでは間違いなく堀北は折れる。
柚椰は堀北に期待しているからこそ、櫛田の味方であることを望んだ。
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