彼は学校について思考する。
「はぁ……」
学校に到着し、校門をくぐったところで櫛田は深々とため息をついていた。
ため息の原因はただ一つ、つい先ほどの出来事である。
「どうしたんだい櫛田? そんなため息なんてついて」
そして元凶であるはずの男はあっけらかんとした態度で尋ねてきた。
白々しい男の質問に櫛田はジトーッとした目を向けた。
「誰の所為だと思ってるのかな? 全く、まさか褒められてこんなに疲れるとは思わなかったよ……」
「まぁまぁ、いい運動になったと前向きに考えるといいよ」
「女の子のこと弄ぶ黛君なんて嫌い……」
柚椰の言い様に櫛田は思わず恨み言を漏らした。
もちろん本気で嫌いだなどとは思っていないが、少しくらい困らせてやろうという意地もあったのだ。
「それは困るね。君とはこれからも仲良くやっていきたいんだ。ここには他に知り合いなんていないから、この縁は切りたくないな」
ニンマリと笑いながら話す柚椰に櫛田はさらにどっと疲れた気持ちになった。
「私だって知り合いいないから黛君とは友達でいたいけど……黛君意地悪だし」
「別に思ってもないことを言ったわけではないよ? 本当に君の事は可愛いと思っているさ」
「そっちのほうが余計悪いよっ!」
またしても可愛いと言われたことで櫛田は再び顔が熱くなってしまった。
朝の褒め殺しがお世辞ではなく本心であるなら余計に性質が悪い。
いくら本心だからと言ってこうもポイポイと褒められていたら心臓に良くないのだ。
「とりあえずクラス表が出てるみたいだから見に行こうか。あぁ、もしクラス分かれてしまっても遊びに行くからね」
「それって私と遊ぶんだよね? 私で遊ぶつもりじゃないよね?」
「当たり前だろう? 女の子で遊ぶなんて酷いじゃないか」
「どの口が言ってるのかなほんとに……」
全く自覚が無い柚椰にもう何も言うまいと櫛田は諦めたようだ。
ガックリとうな垂れている櫛田に柚椰はカラカラと笑っている。
なにはともあれ、二人はクラス表が張り出されている掲示板の前まで向かった。
「あ、私Dクラスだ」
先に櫛田が自分の名前をDクラスの欄で発見したようだ。
「俺もDだね」
そして柚椰もまたDクラスの欄に自分の名前を見つけたらしい。
お互い共にDクラスだと分かったことで柚椰はニッコリと櫛田に笑いかけた。
「やったね櫛田、俺たち同じクラスみたいだ」
「なんでだろう、あんまり嬉しくない……」
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