彼らは最初の関門を突破する。
中間テスト前日、事前の打ち合わせ通り櫛田はクラス全員に過去問を配った。
男子たちは櫛田を救いの女神のように崇めており、特に池と山内に関しては感動のあまり叫んでいた。
女子もまた彼女の大手柄に惜しみない賛辞を贈っていた。
須藤だけはどうして櫛田が配っているのか不思議そうな顔をしていたが、柚椰が黙っていろとジェスチャーを送ると素直に頷いていた。
こうしてDクラスは、過去問という強力な武器を手に中間テストに臨むこととなったのであった。
その日の夜、柚椰は須藤の部屋に押し掛け、テスト勉強の最終確認をしていた。
過去問を一通り須藤に解かせ、それを採点する事で仕上がり具合を把握するというものだ。
今採点しているのは最後の教科である英語。須藤が最も不得意だった科目だ。
「よし、英語は63点。これで5教科全部一通りクリアだね」
「よっしゃあっ!」
採点の結果は上々と言っていいものだった。
勉強開始前は中学英語すら壊滅的だった状態だった須藤。
それが僅か2週間でついに6割取れるまでになったのだから上出来だろう。
柚椰は須藤の書いた答案を一枚一枚捲りながら振り返った。
「国語が76点、数学が68点、社会が79点、理科が67点。そして英語が63点。2週間でここまで伸ばしたのは君の努力の結果だ。良くやったね」
「へへっ、俺だって本気でやりゃこんなもんよ!」
柚椰に褒められて須藤はいつになく上機嫌だった。
「だけど、どれもこれも微妙なミスが目立つのは確かだね。国語と社会に関しては漢字間違いが多いし、数学に関しては勿体ない計算ミスがある。理科は公式を微妙に間違えて覚えているし、英語はスペルミスがある。まぁこれは知識量の問題だから流石に2週間じゃ限度があるか。数学の計算ミスは明日気をつけたほうがいい。小さいミスが積み重なれば点数は伸びないよ?」
「うっ! そ、それは、まぁ……気をつけるけどよ」
急成長したとはいえ流石に褒めっぱなしとはいかず、柚椰は目についた点を1つ1つ指摘した。
その苦言に上げて落とされたと言わんばかりに須藤は項垂れる。
「まぁ、そこだけ気をつけていれば心配ないだろうね。明日はいつも通り、リラックスして臨めばいいよ。間違っても寝坊はしないようにね?」
「分かってるって、こんだけ頑張って当日寝坊でテストすっぽかすとか笑えねぇからな」
須藤も言われたことは百も承知のようだ。
「じゃあ、俺はそろそろお暇するよ」
「おう、じゃあな!」
いそいそと荷物を纏めて柚椰は須藤の部屋を後にした。
「欠席者は無し。ちゃんと全員揃っているみたいだな」
ついに迎えた中間テスト当日。茶柱先生が不敵な笑みを浮かべながら教室へやって来た。
「お前ら落ちこぼれにとって、最初の関門がやって来たわけだが、何か質問は?」
「僕たちはこの数週間、真剣に勉強に取り組んできました。このクラスで赤点を取る生徒は居ないと思います」
「ほう? 随分な自信だな平田」
平田の言葉に同調するように、他の生徒たちも自信に満ち溢れた表情をしている。
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