ハーメルン
ようこそ人間讃歌の楽園へ
彼と孤独少女の休日。




 期末テストも無事に終わり、もうすぐ夏休みに差し掛かる頃。
 休日のある日、柚椰と堀北は敷地内のファミレスで昼食を摂っていた。
 1学期は終業式を残すのみとなったため、以前約束していた通り、こうして一緒に出かけているのだ。

「1学期ももうすぐ終わりだね」

「そうね、期末テストも退学者が出なくてよかったわ」

「もう須藤たちも心配いらないんじゃないかな。今回だって前回と比べれば大分飲み込みが早かったしね」

「えぇ。確かに負担はかなり少なかったわ。真面目に授業を受けるようになったからか、基礎は既に出来上がってたから対策もしやすかった」

「堀北様様だね」

「黛君だって対策問題を作るのに協力してくれたじゃない」

「前回は絞り込みも対策も任せきりにしてしまったからね。それくらいはやるさ」

「なんにしても助かったわ。ありがとう」

「どういたしまして」

 堀北は微笑みながら礼を述べ、柚椰はそれを受け取った。
 二人は食事を終え、食後のコーヒーを飲む。

「今日はこれからどうしようか?」

「本屋に行きたいわ。目当ての新刊が出てるそうなの」

「そうか、じゃあ行こう」

 コーヒーを飲み終え、二人は席を立った。
 柚椰は約束通り堀北の分の食事代を支払った。
 店を出ると、二人はショッピングモールに入っている本屋を目指して歩き出す。

「折角だから俺も何か適当に見繕ってみようか」

 本屋に行くということで、柚椰も何か本を買おうと思ったのかそんなことを呟いた。
 その呟きを堀北は拾う。

「黛君さえよければ、私が見繕ってあげるけど?」

「え、いいのかい?」

「構わないわ。私たちは親友なのだから」

 胸に手を当て、何故か自慢げに堀北がそう言った。
 気がつけば彼女の中の柚椰の立ち位置が友達から親友にランクアップしている。
 ここ最近彼女は柚椰の友達であることをアピールするようになった。
 少し前の彼女では考えられない変化だろう。

「じゃあお願いしようかな。堀北のチョイスなら安心だ」

「分かったわ。黛君はどんなジャンルが好きなのかしら? ミステリー、サスペンス、SF、それともホラーとかかしら?」

 好きな話題だからか、堀北はいつになく楽しそうだ。
 そんな彼女を微笑ましく思いながらも、柚椰は顎に手を当て思案する。

「それが基本的に雑食なんだ。その時その時の心の持ちようで惹かれるものは違ってくるだろう? 恋愛小説であったりアクションであったり。だからなんでも好きかな」

「意外ね。黛君が恋愛小説を読むなんて」

「そんなに意外かな。そういう堀北はどんなものを読んでいるんだい?」

「そうね……私は推理小説が多いかしら。読みながら推理するのが好きなの」

「いいね。じゃあ俺のも推理小説で選んでほしいな」

「分かったわ」

 そうこうしているうちに二人は本屋に到着し、揃って中へと入っていった。
 堀北は早速店内の一角に設けられている新刊コーナーに足を運び、目当ての本を物色し始める。
 数分と経たずに目当ての新刊を見つけたため、引き続いて柚椰の本を見繕うために推理小説の棚へ向かった。

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