三者三様、少年少女は奮闘する。
森を抜ける直前の茂みから見えた浜辺に、Cクラスの大勢の生徒が見える。
綾小路と堀北が見たCクラスの状況は彼らの想像の斜め上を行っていた。
「嘘でしょ……まさか、こんなことってあり得る?」
目の前の光景に堀北は何度もあり得ないと口にしていた。
仮設トイレやシャワーが設置されているのはDクラスも同じであったがそれ以外が問題だった。
日光対策のタープにバーベキューセット。
チェアーにパラソル。スナック菓子とドリンクと娯楽に必要なありとあらゆる設備が備えられていた。
肉を焦がす煙と笑い声。
沖合では水上バイクが駆け抜け、海を満喫する生徒が悲鳴をあげながら楽しんでいる。
ざっと見渡すだけでも150ポイント以上を吐き出していることが伺えた。
「……もしかしてCクラスの取った選択は」
「あぁ、柚椰が言っていた最初の選択肢。ポイントを全て使ってバカンスを楽しむことにしたんだろ」
「確かめに行きましょう。Cクラスがどういうつもりでその選択をしたのか」
茂みから二人で浜辺へと足を踏み入れ、砂を踏みしめていく。
するとすぐに男子生徒が一人彼らに気づき、傍にいた男子に声をかける。
相手はチェアーに体を預けているようで二人からは顔が見えない。
すぐに男子は綾小路たちに方へ駆け寄ってきた。
「あの、龍園さんが呼んでます……」
そう伝えに来た男子に覇気はなく、どこか怯えた様子だ。
男子の様子を見た二人は、以前柚椰が言っていたことを思い出した。
「どうやらCクラスの王様は柚椰君の言う通りかなりの暴君のようね」
「そうみたいだな」
二人は呼びに来た男子生徒に返事をして彼の後をついていく。
そしてこの現状を指示したと思われる男の傍へと近づいた。
「よう、Dクラスの猿共。来ると思ったぜ」
「随分と羽振りが良いのね。相当豪遊しているようだけど」
堀北が水着姿でチェアーに寝そべる龍園を見下ろした。
「見ての通りだ。俺たちは楽しい楽しいバカンスを満喫してるのさ」
「そう、Cクラスはポイントを残すことを捨てたのね」
「おうとも。こんな島でせこせこサバイバルなんて馬鹿らしいからな」
「それは貴方の独断かしら? だとしたら傍若無人としか言えないわね」
「俺がYesと言えば他の奴らもYesと言う。王である俺の言うことは絶対だ」
龍園はクツクツと笑い、無線機のそばに置いてあった水のペットボトルを手にした。
「たった2日でどれだけポイントを使ったの。見渡すだけでも100ポイントは優に超えているように見受けられるけど」
「さぁ幾らだろうなぁ。ちまちま計算なんてしてねぇもんでな」
そう言うと龍園はペットボトルのキャップを開け、一口飲んだ。
すると何かお気に召さなかったのか眉を顰めて舌打ちした。
「チッ、もう温くなってやがる。おい石崎。キンキンに冷えた水持ってこい」
「は、はい」
傍でバレーをしていた石崎が慌ててテントの中へと水を取りに行った。
「俺たちはバカンスを楽しむことを選んだ。つまり、この試験中お前らの敵にはなりようがないってことだ。わかるだろ?」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/11
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク