島での生活は終わりを告げ、彼は嗤う。
8月7日。長かった無人島生活がようやく終わりを迎える。
試験終了時間とされていた正午になったが、周囲に教師たちの姿はない。
『ただいま試験結果の集計を行なっております。暫くお待ち下さい。既に試験は終了しているため、各自飲み物やお手洗いを希望する場合は休憩所をご利用下さい』
そんなアナウンスが流れ、生徒たちが一斉に休憩所として設けられている仮説テントへ集まっていく。
そこにはテーブルや椅子も用意されており、十分な休憩が取れるようになっていた。
「綾小路君、お疲れ様。この一週間いろいろありがとう」
平田が労いの言葉と共に、2つ持っていた紙コップのうち1つを綾小路に渡した。
「礼を言うのはこっちだ。平田が表立ってクラスを引っ張ってきたんだ。お前こそおつかれ」
「ううん、僕だけの力じゃないよ。後半は櫛田さんが頑張って纏めていたし、それに……」
平田はそこで心配そうに船の方を見る。
「黛君がいなかったら……きっと無事にここまでくることは出来なかったと思う」
彼は昨夜リタイアした柚椰のことが気にかかっているらしい。
夜の点呼の際に、茶柱先生の口から柚椰がリタイアしたということがクラスに伝えられた。
それを聞かされたとき、クラスは大いにざわついた。
リーダーを担う柚椰の突然のリタイア。
前日のこともあってか彼の真意が読めないクラスメイトは混乱していた。
結局明確な答えは出ないまま日は明け、試験終了を迎えたのだ。
「綾小路君、黛君は……」
「あぁ。アイツのことだ。別に気にしてないからって言いそうだな」
「そうだね」
「なぁ、お前ら何の話してんだ?」
「そうそう、黛がどうしたって?」
二人の会話が聞こえてきたのか、須藤と池が寄ってきた。
その声が思いの外大きかったからか、他のDクラスの面々も平田の方へ視線を向ける。
「綾小路君」
平田は隣にいる綾小路の顔を伺ったが、彼が頷いたためクラスメイトを見渡す。
「黛君はリーダーとして、文句無しの働きをしてくれてたってことだよ」
「平田君どういうこと?」
女子の中から疑問の声が上がるが、それに対して平田は微笑みを以って応える。
「もうすぐ分かると思うよ。それにしても……Cクラスは彼女一人みたいだね」
平田は唯一残っているCクラスの生徒である伊吹の方へ視線を移した。
伊吹もちょうど彼らの方を見ていたのか、視線がかち合うや否や不敵に笑って近づいてくる。
「よう。お互い無事に終わってよかったな」
伊吹は休憩所で貰ってきたと思われるスポーツドリンクの入った紙コップを片手に白々しくそんなことを言う。
昨日起きた放火の犯人が目の前の女子だと疑っているDクラスの面々は近づいてきた彼女を睨んでいる。
「もう気づいてると思うけど、私はお前らの中にいるリーダーを探るために潜り込んだスパイさ。どうやって潜入してやろうかと思ってたけど、そこの馬鹿のおかげて楽に潜り込めたよ。ありがとな」
伊吹はチラリと山内を流し目で見ながらDクラスを嘲笑した。
暗に山内の所為だと教えるような口ぶりに一同の視線が山内に集中する。
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