彼は火種を見つける。
話し合いが終わった後、各々は夜のグループディスカッションまでの間の時間を過ごすか考えていた。
平田は軽井沢から呼び出されたようで、早々に退出していった。
櫛田は友達との予定があるらしくこれまた足早に部屋を出て行く。
「私も部屋に戻るわ。何かあったら連絡して」
そう言い残して堀北も自分の部屋へ戻っていった。
「すまん、俺も呼び出しだ」
携帯を片手に綾小路が言った。
どうやら彼もこの後予定があるらしく、二人に言い残して足早に出て行く。
室内に残っているのは幸村と柚椰だけとなった。
「そういえば、幸村と清隆のグループにいるクラスメイトは博士と軽井沢だったね。どんな雰囲気なんだい?」
柚椰がそう尋ねるや否や幸村は顔を顰めた。
その表情から凡その状況を察した柚椰だったが、彼を他所に幸村は不満をぶちまけ始めた。
「どうもこうも、最悪だ。博士は良いとしても軽井沢が酷すぎる。事前のメールすらロクに読まずに説明会に来るような奴だぞ? 試験説明も一々遮って好き勝手に文句を言う始末だ。おかげで真嶋先生から余計な注意をされる羽目になった」
「おや、それはよくないな」
「綾小路や博士だけだったら足並みを揃えることが出来たが、軽井沢は協力するどころか俺たちと関わりたくもないといった態度だ。さっきのグループディスカッションでも酷かったぞ」
幸村はそう言うと、数時間前のグループディスカッションのことを語り始めた。
『ではこれより1回目のグループディスカッションを開始します』
午前1時、アナウンスによって話し合いの開始が告げられたものの、室内には重たい空気が流れていた。
他クラスの人間と同じ空間に押し込められていることもあり、誰もが口を閉ざす。
そんな空気を変えたのはBクラスの一之瀬だった。
「はいちゅうもーく。大体の名前は分かってるけど、一応学校からの指示もあったことだし、簡単に自己紹介しておこうよ。初めて顔を合わせる人もいるかもしれないし」
この場を仕切る役目を買って出た彼女は、嫌な顔一つせずにこやかに進行役をやった。
「今更自己紹介の必要なんてあるのか? 学校側も本気で言ったとは思えない。したい奴だけがすればいいだろう」
Aクラスの町田という男子が一之瀬の提案に異議を唱える。
学校からの指示は強制のものではなく、しなくても構わないものだろうというのが彼の主張だった。
「町田君がそうしたいなら強制はしないよ。だけど、この部屋にマイクが仕込まれてるかもしれないよ? 私たちが指示に従うかどうか確認しているかもしれない。そうなったときに不利になるのは指示に従わなかった人だし、もしかしたらグループ全体の責任になるかもしれないよ?」
そう言われれば異を唱えた男子も折れざるを得ない。
その後、一之瀬を皮切りに全員が自己紹介を行なった。
全員が短めの自己紹介を終えると、一之瀬は再び話を切り出した。
「これで学校からの言いつけは果たせたかな? それでこれからのことだけど、どうやって進めていこうか。私が進行役をするのが嫌なら言ってもらえる?」
希望するならいつでも仕切り役を代わる用意があると彼女は問いかける。
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