彼は俺様御曹司に呼ばれる。
「おはよう山内!」
「おはよう池!」
入学から一週間が経過したある朝、池と山内はお互い元気に挨拶を交わしていた。
いつもは始業ギリギリに登校してくる二人なのだが、今日は何故か早かった。
「いやぁー、授業が楽しみ過ぎて目が冴えちゃってさー!」
「この学校は最高だよな、まさかこの時期から水泳があるなんてさ! 水泳と言えば女の子! 女の子と言えばスク水だよな!」
どうやら二人が興奮しているのは今日から水泳の授業が始まるかららしい。
テンションを抑えきれない二人は朝早くから熱く語り合っている。
しかしその所為か、二人は周りが全く見えていなかった。
その証拠に教室であるにも関わらず、大っぴらに声のボリュームも考えずトークを繰り広げている。
であれば、当然その会話は教室にいる他の生徒にも聞こえている。
一部の女子は早くも二人にドン引きしていた。
しかしそんな女子からの視線に、悲しいかな池と山内は全く気づいていない。
「おーい博士~、ちょっと来てくれよ!」
「ふふっ、呼んだ?」
太目の生徒が、あだ名なのか『博士』と呼ばれて池に近づいていった。
「博士、女子の水着ちゃんと記録してくれよ?」
「任せてくだされ。体調不良で授業を見学する予定ンゴ」
「記録? なんだよそれ」
いつのまにか登校してきていたのか、須藤もその輪に加わっていた。
「博士にクラスの女子のおっぱい大きい子ランキングを作ってもらうんだよ! あわよくば携帯で画像撮影とかもなっ!」
「……おいおい、マジか」
いくら連む仲とはいえ、流石に須藤も引いているようだ。
周りで聞いていた女子たちも彼らに対し、まるで汚物を見るかのような目線を向けている。
「おーい綾小路」
突如、池が席に座っていた綾小路に声をかけた。
池はものすごく気持ちの悪い笑顔で手招きしている。
「な、なんだよ」
戸惑いながらも、綾小路は呼ばれるがまま彼らのところまで近づいていった。
「実は今俺たち、女子の胸の大きさで賭けようってことになってんだけどさ」
「オッズ表もあるやで」
そう言うと博士は得意げにタブレットを操作し、あるファイルをタップした。
画面に映し出されたのはクラスの女子全員の名前が書かれている表。
表には各女子一人一人にオッズが書かれている。
「えーっと……じゃあ、参加しようかな」
「お! やろうぜやろうぜ!」
少し考えて、綾小路は参加を表明した。
また一人仲間が増えたことに池はテンションがさらに上がっていく。
彼らの賑わいに惹かれるように、他の男子たちも一人、また一人と群がり始めた。
「おはよう」
そしてまた一人、男子が登校してきた。
挨拶をしながら教室に入ってきたのは柚椰だった。
「黛! お前もちょっとこっちこいよこっち!」
また一人仲間を見つけたとでも言うように、池はさっそく柚椰を呼んだ。
「あぁ、だけどその前に席に荷物だけ置かせてほしいな」
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