ハーメルン
ようこそ人間讃歌の楽園へ
彼らは希望へ向けて結託する。



 5月1日、今日も学校開始を告げる始業のチャイムが鳴った。
 それから程なくして担任である茶柱先生がポスターの筒を手に持って教室に入って来る。
 先生の顔はいつになく険しい。

「せんせーどうしたんすかぁ? ひょっとして生理でも止まりましたぁ?」

 池が先生の様子を見て心底デリカシーの無い発言をかました。
 その発言から、女子たちは汚物を見るような目で池を睨んだ。

「これよりホームルームを始める。が、その前に何か質問はあるか? 
 気になることがあるのなら今のうちに聞いておくといい」

 池のセクハラ発言を一切無視して先生はそんなことを言った。
 その口ぶりは、生徒から質問があることを確信しているかのようだ。
 実際その通り、数人の生徒がすぐさま手を上げた。

「あの、今朝確認したらポイントが振り込まれてないんですけど。
 毎月1日に支給されるんじゃなかったんですか? 
 おかげで今朝ジュース買えなくて焦りましたよ」

 本堂という生徒が今朝の出来事からそんな質問をした。
 彼の言う通り今日は5月の月初め、ポイントが支給される日なのだ。
 にも関わらず、彼が今朝端末を確認したところポイントが振り込まれていなかったようだ。

「本堂、前に説明した通りだ。
 ポイントは毎月1日に振り込まれる。
 今月も問題なく振り込まれたことを学校側は確認している」

「えっ...でも、振り込まれてなかった、よな?」

 本道は周りに居るクラスメイトに同意を求めた。
 彼の問いかけに山内や他の男子や女子も頷いている。
 ポイントは振り込まれていない。
 にも関わらず先生は振り込まれたと言っている。
 一体どういうことだと生徒たちは困惑した。

「...お前らは本当に愚かな生徒たちだな」

 恐ろしく冷たい声で茶柱先生はそう言った。

「愚か、っすか...?」

 何を言われたのか分かっていないのか本堂は思わず聞き返す。

「座れ本堂、二度は言わんぞ」

「さ、佐枝ちゃん先生?」

 茶柱先生の底冷えするような声にようやく何かがおかしいと気づいたのか、本堂はどもりながらも席に着いた。

「ポイントは振り込まれた。これは間違いない。
 このクラスだけ忘れられた、などという可能性も無い。わかったか?」

「い、いや、分かったかって言われても、なぁ? 
 実際振り込まれてないわけだし...」

 それでも納得がいかないと本堂は不満気な様子だ。
 他の生徒たちも本堂と同じ気持ちなのか、皆不満そうな表情を見せている。

「ははは、なるほど、そういうことだねティーチャー? 
 理解できたよ、この謎解きがね」

 高円寺は何かに気づいたのかそう言って笑った。
 そして机に足を乗せ、偉そうな態度で本堂を指差した。

「簡単なことさ、私たちDクラスには1ポイントたりとも支給されなかった。
 つまりはそういうことだよ」

「はぁ? なんでだよ。毎月10万ポイント振り込まれるって......」

「私はそう聞いた覚えはないがね。そうだろう?」

 高円寺はニヤニヤと笑いながら茶柱先生にも指先を向けた。

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