第15話
「君が、香川を殺ったのか…?」
龍騎がオーズに聞いた。
「違います…。俺には、香川さんを倒す理由がありません。」
オーズは否定した。
「理由?この世界じゃ、生き残ることが戦う理由なんじゃないのか?」
ベルデが詰めるように言った。
「返答次第じゃ、俺は、君を倒さないといけない…。どうなんだ火野君!」
龍騎は、デッキからカードを引き、ドラグバイザーに装填しようとした。しかし。
「止せ。」
その手をゾルダが掴んで止めた。
「北岡!?」
「お互いこんな姿じゃ、冷静に話し合うなんて無理だろう。それに、香川を殺ったって話、東條のデマかもしれないだろ?」
自身のカードデッキを抜き取り、元の姿に戻った北岡が言った。
「…北岡さん。」
オーズもまた、映司の姿に戻った。
そして、それに倣い、龍騎は榊原へ、ベルデは高見沢ではない、コートの青年の姿に戻った。
「んじゃ、まぁ。俺の事務所にでも戻るか。」
北岡に促され、一向は北岡法律事務所へ向かった。
「木村、さん?」
北岡法律事務所に戻った映司は、コートの青年・木村大地に言った。
「ああ。二人の言葉を借りて言うなら、"もう一人のベルデ"らしいがな。」
木村は、腑に落ちない様子ではあるものの、そう言った。
「あの…、二人の人物がそれぞれ同じライダーになることなんてあるんですか?」
「いや…。デッキはそれぞれ一つしかないから、少なくとも同じ時間の中で変身は出来ないはずだ。デッキの引き継ぎの可能性もあるが、前例がないはず。」
映司は、素朴に思った疑問を北岡にぶつけたが、北岡は首を横に降って答えた。
「もちろん、その高見沢ってやつとも合ったことはない。…多分な。」
木村は言ったが、その様子から、彼もまた記憶が混濁しているようにも見えた。
「多分?」
「みんなもそうらしいが、俺も記憶が曖昧なんだ。覚えていることと言ったら、誰かと一緒にビールを飲む、なんて平凡な願いくらいさ。」
木村は肩を落として言った。
「…まぁ、願いがそんなもんだったし、敵意もないしで、取り敢えず一緒に行動してるって訳だ。」
北岡が言った。
「…ところで。」
暫く黙っていた榊原が口を開いた。
「火野君…。香川を殺ったのか?」
「…確かに、僕は香川さんと会いました。」
映司は素直に答えた。
「じゃあ、やっぱり…!」
「でも、俺じゃありません!…けど、心当たりはあります。」
映司は強く否定したものの、認めるような言い方をした。それは仮に、"映司が殺った"とするならば、一つの可能性を見つけていたからだ。
「どういうことだ?」
木村が映司に尋ねた。
「信じてもらえないかもしれないですけど、この世界には、"もう一人の俺"がいます。」
映司は、先程突如現れたスーツ姿の自分を思い浮かべて言った。
「…はぁ?もう一人の火野だって?」
北岡は、理解出来ないと言わんばかりの態度を見せた。
「詳しくは、俺もわかりません。ただ、タイガに襲われる直前まで、もう一人の俺といましたから。」
「…本当なのか?」
榊原が疑うように言ったが、映司は強く頷いた。
「…まぁ、"もう一人のベルデ"なら、ここにもいるから、火野の話も強くは否定できないな。」
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