彼女との約束/紛失系女子
第6.5話 彼女との約束
"異世界人"あるいは"召喚者"。または"爆炎の支配者"と呼ばれる英雄。それが、井沢静江という人間だった。
彼女は、"微睡みの暴虐者"と呼ばれている少女からすれば新参者である魔王レオン・クロムウェルによってこの世界に召喚された。
そして、勇者クロノアに拾われ、育てられた。拾われた後、クロノアを除いて彼女が初めて会ったのは、まるで宗教画に描かれるような美しい少女である。
天使の名を冠する彼女は、名前と同じでとても美しく優しい心を持っていた。
彼女は、見ず知らずのシズエに対して微笑みかけてくれて、この世界の知識と技術を惜しみなく与えてくれた。上手く出来たら、頭を撫でて褒めてくれた。
だから、彼女にとって……。
シズエ・イザワにとって、彼女はとても優しい人なのだ。
その日、リムル=テンペストは運命の出会いを果たした。
巨大妖蟻の群れに追われている四人の冒険者パーティーに助太刀をした事が、出会いとなった。
運命の人……シズが残り一匹の巨大妖蟻を残して油断したその時に、その一匹を倒したのが、リムルである。
パーティーの三人、カバル、ギド、エレンの三人がシズに駆け寄る。そして、一体誰が助けてくれたのか? そう思って辺りを見渡した。
そして見つけたのが……。
「……スライム?」
ぽかんとしてしまうのも、無理はない。
水色の流動体、最弱の魔物等々と言われる相手が自分達を助けたなんて、一見では信じられないだろう。
が、それは助けた本人からすれば不服であろう。むっとしたような声音で、彼は言った。
「スライムで悪いか」
「あ、いや…」
慌てた様子を見せるカバルだったが、リムルは地面に落ちた仮面をシズに向けた。先程までは彼女がその仮面を付けていたのだ。
そして、露わになったシズの顔を見て、リムルは少し驚く。そう、彼女こそ……。
(……思ったより早く出会ったな。運命の人……)
少しだけ嬉しくなったリムル。
このペースならば、あのもう一人の運命の人……ラフィエル=スノウホワイトとも出会える日も、そう遠くはないのかもしれない。
なんて思っていると、ドサッとカバルがその場に座り込んだ。怪我かと問えば、否と返ってきたものの。
なんとこの四人、3日も巨大妖蟻に追われていたという。
「荷物は落とすし」
「振り切ったと思って休めば寝込みを襲われるし」
「装備は壊れるしぃ、くたくただし、お腹ぺこぺこだしぃ」
相当溜まっていたのか、堰を切ったように溢れる愚痴。
流石に同情したし、元々のお人好し基質のリムルがこれを聞いてスルー出来るはずもなく、
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク