第六話「偉大な宇宙海賊とのび太の盟約」
――結局、国家総力戦では軍事の素人である日本側の生え抜き官僚が失態を重ねたため、実質は黒江が自衛隊の然るべき責任者の了解のもと、自分で手筈を整える事になってしまった。演習に教習。やることはてんこ盛りであった。防衛装備庁はこの失敗で扶桑の失望と失笑を買う羽目になり、黒江は図上演習をしつつ、防衛装備庁のお偉方をどう言いくるめるかを思考している。防衛装備庁は21世紀の自衛隊の兵器運用ドクトリンは平時の抑止力を目的に構築されたため、必ずしも国家総力戦には適合しない事にみっともなく狼狽える者がいる始末であったため、黒江からは見限られており、防衛大臣への直訴で装備使用の承認を得る始末だった。実際、そうでなくては迅速な装備の補充は成らないからで、Gフォースはかなりの綱渡り的な組織運営がなされていると言えた――
――日本は戦略爆撃機の封殺に21世紀以降の武器と戦術を惜しげもなく投入したため、B-29などの大戦型戦略爆撃機は瞬く間に戦術兵器としても陳腐化した。スタンドオフ兵器が使われれば、大戦型戦略爆撃機などは単なるハエも同然である。更に当時の水準を超えるM2級の速度を持つ超音速邀撃機が現れたため、カールスラントは『自分たちが先鞭をつけたのに、日本連邦がその成果を持ち込んできやがった』とぶーたれていたが、日本のB-29打倒への執念がなせる業と言える。カールスラントがエース達の反対で遅延していた実験の成果が日本の手で完成品として投入され始めた事実はカールスラント軍部の内紛を誘発し、技術者の大量流出を招いた。カールスラントのエース達はスコア再精査で面目丸つぶれになった上、一部のトップエースのように政治的に保護されたわけでもないために憤慨して、サボタージュする部隊も多かった。そのため、必然的にGウィッチの役目は大きくならざるを得なかった。かつての武子の思いと裏腹に、一騎当千の猛者が必要とされる時代が到来したのである。日本は中道右派であっても、軍隊には基本として冷淡なため、大規模動員も政治的に差止めされそうだと考えた扶桑は、Gウィッチに自由勤務権と引き換えに、政治的な『シンボル』の役目と『戦果』を求めた。日本に様々な枷を嵌められた扶桑としては、ウィッチの志願数がこれから減る事が容易に予測可能なので、その完全上位互換かつ、日本にとっても政治的に都合が良い(年齢的に高校生以上の者が多い)Gウィッチを前線配置にし続けることは既定路線とされた――
――一方、黒江が課した修行はプリキュア勢に取っては、羞恥心との戦いでもあった。だが、公職についている以上、プリキュアメンバーのメディアへの一定の露出は仕方がないところであった。当時は軍部への風当たりが厳しくなり、特に日独は近代化を名目にしての軍縮を志向したため、前線の交代要員不足はいよいよ以て最悪に近くなったため、プリキュアの力で補う必要性は大きくなった。当時は航空戦力は実機が優先され、ウィッチはおざなりにされており、扶桑系部隊は実質、64Fしか実働部隊がいなくなる有様であった。また、日本側の一部が新型機をひたすら求めるため、矢継ぎ早の機種更新に用兵側が追いつけないという問題も多発。仕方がないため、既存機の中では最新である紫電改/烈風/疾風/キ100を普及させる事でとりあえず妥協された。日本側は史実で自分らが作った機種を過小評価する嫌いがあり、自軍レシプロ機のP-51への劣位をこれでもかと騒ぎ立てたため、軍部は釈明に追われた。だが、ウィッチ世界でのマスタングの実機はブリタニアとの連絡が絶たれた事による整備要領書の完全普及の阻害、マーリンエンジンの生産歩まりも工員のストライキで低下。戦線に配備された実機は多くはなく、史実では配備済みのはずのD型でさえ、本国軍にはあまり出回っていない。そこが日本マスメディアが大恥をかく点であった。また、扶桑皇国の機体は史実より燃料事情が良い事から、史実の大戦末期の日本軍にありがちな『大戦後期の機体は戦場での速度は目も当てられないもの』ではない事実がメーカー側に公式声明を出されたため、マスメディアは訂正記事を出す羽目になるなど、なんともしまらない顛末になった話は山のように出た。また、紫電改の扶桑での速度スペックは690キロ近くを余裕で出すもので、日本側の記録より数段上のものである事がわかると、今度はより高性能のジェット機の配備をせっついてきた。だが、あまりの機種変更速度に肝心の用兵側がついてゆけないという切実な問題は軍政的意味で好ましくない。結局はレシプロ機は陣風とキ100を加え、ジェット機はF-86、F-104、ドラケン、F-8を重点生産する事で落ち着く。国産機種はダイ・アナザー・デイの完了後の生産とされたが、当時は既存の国産ジェット機の全てが旧式化し、生産中止がなされた直後であったので、決定に反発した横須賀航空隊が機材焼却事件を起こすに至る。横須賀/航空審査部相当の新テスト部隊については、航空自衛隊の援助で軍中央の指揮下にない組織として戦後に再建されるが、戦時中の内は今上天皇(昭和天皇)の考えもあって、64Fが当面は実戦部隊と兼任する事にされた。64Fはテストパイロット経験者で臨時に班を作り、それで新機材のテストを行うことで対処した。テストパイロットはエースパイロットが転じる事が多かったので、すんなりと対応できた。最大の問題は戦力集中に伴い、事実上は切り捨てられた他戦線であり、ベテランを引き抜かれ、交代要員も送られなかったため、作戦行動すらままならない部隊が続出中であった。のび太は連合軍の依頼を受け、当座の解決策として、自分の転生体に連絡をとり、キャプテン・ハーロックに次いで、クイーンエメラルダスを呼び寄せ、正式に協力を依頼。両者はのび太の仲介という形で共闘した。『野比家には借りがある』とは、クイーンエメラルダスの談。
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