ハーメルン
私は護る小人を
第12話 本

森の水辺の直ぐ近くで、鎧を纏う集団がテントの設営を
開始していた。
日も暮れ初め、太陽が地平へと沈むなか、各々ソウルから取り出したものを置いていく。
彼らに補給隊は必要ない、食べ物や武器等をソウル化することにより持ち運んでいるからだ。

巨人達はそんなテントは持っておらず、何かしら羽織るものを着て眠りにつこうとしている。

そんな中、小柄な人物が標準的なサイズの青い騎士と肩を並べて見回りをしている。

「アルトリウス、今日の行軍はここまでで明日には龍達の住み家に到着する予定だ。騎士達には充分な休息を取らせるように、との命令だ。」

「もう皆、見ての通り野営に入ってる。」

二人は恋人とまでは行かないまでも、それでもどこか和やかな雰囲気を出している。
二人は隊から少し離れた巨木の下で話を始めた。

「アルトリウス、お前は怖いか?」

「古龍がか?勿論怖いさ、私達の曾じい様達はその昔戦ったそうだ、だが私達は初陣だ。四騎士と言われても、龍狩りだけは初めてさ。」

「私もだ。ゴーとオーンスタインは龍狩りを良く知ってるそうだがな、他の連中は皆私達と対して変わらないが…、話の途中で誰か来たようだ。」

二人は各々の武器をとり、気配が来る方向を見た。

「う~ん、こちらの方向で良い筈なんだが…?何かすごいものに当たってしまったか?」

黒い鎧を纏った、小人の騎士がそこに現れた。




《旅館》ウェルス 前話から数時間後

来たか。
遠くの方で我々が寝静まるのを、じっと堪えていた連中が動き始めた。
だが、ロウリィと伊丹は未だ起きていて、なにやら行おうとしているが、構うものか。すぐさま殺し合いをはじめてしまおうか?

貴様等には見えずとも私には、貴様等のソウルが蠢いているのをしかと、捉えているのだ。
うん?こいつら同士討ち?いや、元々敵対しているのか?互いに潰し合い始めたな。

これでは戦いに参加せずとも良いか。
さて、では我々の中で非戦闘員の梨紗殿と、テュカ殿、レレイ殿を守りつつ生き残った連中が来たら、反撃でもするか。
もし、テュカ殿に傷を付けたらどうしてくれようか。



彼の目の前では、隠密行動をしていた筈の米、露、中の工作員達が激戦を繰り広げている。
そんな音が響き渡るのだ、寝ていたもの達も起き出して直ぐ様戦闘体勢へと移行する。

そして、そんな中、流れ弾が跳んでくるわけだが、ウェルスは見事にそれを手で掴み三人だけを守る。
正直、古龍の口からレーザーのようなブレスだとか、鉄が容易く融解する炎を受けて、ダメージを負う程度で済む、そんな世代であるだけに銃弾など屁でもない。

それどころか掴んだ銃弾を親指の力だけで弾き出し、撃ってきた方向へと牽制を入れる。

それと同じ頃、ロウリィがめちゃくちゃに暴れまわり、周囲から断末魔が聞こえてくる。
そんな阿鼻叫喚の中、レレイの手元にまた魔術書が現れるが、彼女がそれに気付く事無くそのまま放置される事となる。そして、それは第三者の旅行客に拾われる。

そんな事も露知らずに、戦闘を沈静化させ捕虜は特戦群に任せて、さっさと銀座に戻る。
忘れ物を忘れて、ウェルスにはどうでも良いこの世界の事など、眼中にない。あるのはテュカを筆頭にしたエルフたち、小人の末裔たちのことだけだった。

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