第42話 火を惜しみつつ
だが、彼にとっては良いことなのではないだろうか?無限に続く時間と言う名の地獄からやっと抜け出せたのだ。彼の友も家族ももはや何処にもいない。
有るのは、自分の血と神々の血が混じりあった、異世界に逃げた子供達だけ。
余生を過ごすには充分だろう、彼はベッドの上からただ太陽を見る永遠に続くかの如く光るそれが、寿命を迎えることを彼は知っている。だからこそ、それを偉大に感じるのだろう。
《ピニャの苦難》
アリス、彼女が帰って来た。そう聞いた妾は、執務等ほっぽりだして彼女の安否を急いで確認しに行った。
そこにいた彼女は酷く疲れた顔をしていたが、私の知る彼女がそこにいた。
おまけに・玉ねぎ騎士・バケツ剣士それと見たことの無い立派な騎士が共にいたのは少々驚いたが、彼女の安全が確認されたときの妾は人の目など気にせず、彼女に抱きついていた。
そのときは、本当に安堵したものだ。なのにあんなことになろうとは、露とも知らずにいた。
アリスが帰還して20日ほどたった頃だろうか、自衛隊、いや日本国からある書簡が届いた。
その中身を見るに、妾は頭が白くなる思いだった。内容を端的に言えば、『我々の世界で未曾有の大災害があった、それはお前達がゲートを開いたせいだ。だから、賠償を要求する』そんなことだった。
だが、そこに書いてある金額に目を通せば通すほど、頭が可笑しいのでは、と思える。
帝国の数百年分の賠償を払えと書かれていれば、どうすることも出来ない。払える訳がないのだ。
このままでは、国どころか民まで死ぬ。そうなれば最後だ。だから、妾は何としてもこの条件を何かで肩代わり出来ないかと、外交官と直接に話し条件を飲んだ。
恐らく妾は後世に身内を裏切った、裏切り者として名を残すだろうが、それでも良い。
父上の命、そして多くの交戦派の貴族達の命で国が残るのならば、私はその泥を被ろう!
それしか、方法は無いじゃないか…。
今日も夕日が沈む、誰かが執務室の扉を叩いた。
アリスが、私の元に来たのだ。何だろうか、聞いたら私の頭を撫でてくれた。自然と涙が溢れた、あぁ、辛い本当に味方は誰もいないんじゃないかと思うほどに。
だけど、こうして今も私と共に来てくれる者たちは確かにおるのだろう。薔薇騎士団の面々との顔合わせは少なくなろうとも、きっと私と共にある。
そんな事があった後、アリスが私に話をした。私の元を離れ、灰の大陸へ行くと言う、今回の顛末の元を探すためだと。
危険すぎると言ったが、聞く耳持たず。彼女がこんなにもわがままを言ったのを私は初めて聞いた。そんな彼女の人生を私が決めるわけには行かないか、渋々許可を出す。
また別れだが、永遠の別れではない。いつか再び合える日を楽しみに待とう。ああ、日が昇るまた朝が来る。
《アリスの探求》
あの戦いから早一月あまり、私はあの世界の事を灰の大陸の事をもっと知りたくなっていた。
あのウェルスや、上級騎士、バルドさんやソラールさん達が旅をした世界。
私達が産まれるよりも遥かに昔の世界。
もしかしたら、私はその事を探索して世界に伝えるために産まれてきたのかもしれない。
自惚れてるのかなぁ。
でも、きっとこの大地にはまだ残ってる筈だ。あのウェルスが護りたかった人たちの痕跡が、上級騎士が守ろうとした生活が、忘れ去られた物語が。
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