ハーメルン
異世界との邂逅、その序章。
異世界との邂逅、その序章。

 ランドソルの大通り。
 いつもはこの時間には閉まっているはずの飲み屋には、まだ明かりが灯っていた。
「んっ……ぷはあっ!」
 豪快にジュースを飲みほし、満足そうに笑う少年が一人。
「もう、スバルったらはしたない……」
 銀髪の綺麗な少女がそう呟く。
 スバルと呼ばれたその少年は、大袈裟ににんまりと笑って話しだした。
「せっかくの祝勝会なんだ、これくらいやってもいいだろ? いや、むしろこれくらいやらなきゃ祝勝会じゃないとまで言える」
「え、そ、そうなの……?」
 スバルの断定的な言い方に、銀髪の少女は戸惑いの声を上げた。
「ああ。どうせなら、エミリアたんもいっきに言ってみる?」
 エミリア。そう呼ばれた可愛らしい少女が、スバルから手渡されたジュースを握った。
「ほら、ぐいっと」
 スバルが急かすように言う。
 それに押されたのか、可愛らしくジュースを両手で持ったまま、エミリアがコップへ口を当てた。
 少し戸惑うようなそぶりを見せた後、それを振り払うかのようにゴクゴクとジュースを飲みほしていく。
「んんっ……」
 慣れていない様子で飲み干していくエミリア。
「ん……ぷはー!」
 最後はスバルのを真似て、ぎこちなくそんな声を上げた。
「おお、そんな感じそんな感じ」
 うむうむ、とスバルがうなずいていると、その後ろからひょこりと女の子が現れた。
 全身を甲冑に包み腰には剣を差している、という物騒な姿に似合わない、朗らかな笑顔と明るい声でスバル達に声をかける。
「おお~、あなたもなかなかいい飲みっぷりですね☆」
「あ、ペコリーヌさん。これはその、ちょっとはしたないかな、って思ったんだけど……」
「いえいえ、それくらいが丁度いいんですよ~! こういうときはぐいっといくにかぎります☆」
 ペコリーヌがニコニコと笑いながら、飲み干すようなジェスチャーをする。
「うんうん、ペコリーヌさんはよくわかっていらっしゃる!」
 スバルが首を縦に振りながら同意する。
「やっぱりこういう時は、少しくらい羽目を外すべきだと思うんだよな」
「私もそう思います☆ 今日は祝勝会ですしね、ちょっとくらい大袈裟に楽しんじゃっても誰も文句は言いませんよ!」
「そ、そう……?」
 エミリアが戸惑っているのを見て、ペコリーヌが手をぽんと叩いた。
「それじゃあ、私がこういう時の楽しみ方を教えてあげます☆ ほら、最初はこの魔物の唐揚げからー……」
「え、えええ!?」
 エミリアが何かをいう暇もなく、あっという間にペコリーヌが連れ去っていってしまった。
「あ、行ってしまわれた……」
 その場に一人残されたスバルは、誰か話し相手がいないかと周りを見渡す。
 レムとラムはコッコロと話し込んでいるし、パックはキャルとじゃれて遊んでいる。もっとも、キャルはどこか嫌そうな顔をしているが……。
 大方、からかって遊んでいるのだろう。初対面の人……人? 獣人? にそんなことができるとは……。怖いもの知らずだなと、パックを変な方向で再評価していた。
 キャルの性格をなんとなく把握していたスバルだったので、余計にそう思ったのだろう。実際、スバルが同じことをしたら、キャルに魔法で吹き飛ばされてしまいかねない。
 パックを内心ですげえやつだと褒めつつ、そのまま目を滑らせていくと、一人で肉にかぶりついている少年が目に入った。丁度いい、話したいこともあった。そう思い、その少年へと近づいていく。

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