第8話 アーモリーワンの戦い 2
「オーブ軍のモビルアーマーが合流!!艦長!!」
まったくもって予想外の展開に、タリアは深く息を吐く。ザフト…いや、プラントの領域であるアーモリーワンでの、オーブ軍の介入。事態で言えば前代未聞だ。
オーブとの密談は事前に議長から聞かされていたが、それに合わせる様に起こった新型モビルスーツの奪取。
そしてオーブが極秘に持ち込んでいた新型可変モビルスーツでの迎撃行動。
緊急事態とは言え、外交的には致命的な国際問題に発展することになる。タリアは隣にいるデュランダルを見たが、彼は別段青ざめるわけも無様に狼狽ることもない。むしろ、アーモリーワン宙域でオーブが介入してくるのが当然だと分かっていた様な落ち着き様である。
「インパルスのパワー危険域です。最大であと300!」
オペレーターの若い赤い髪の女性からの声で、タリアはハッと顔を上げた。事態を鑑みても、オーブがこの戦いに介入している事実は変わらないし、なにより意表を突かれたザフトに奪われた新型機を追える戦力がないのも明白だった。
故に、タリアはミネルバの艦長として決断する。
「インパルスまで失うわけにはいきません。ミネルバ発進させます!!」
「艦長ぉ!!」
情けない副長の声を無視して、タリアは隣にいるデュランダルへ、答えは分かっている質問だとわかりながら、あえて言葉を投げる。
「よろしいですね?」
「ああ。頼む、タリア」
何の迷いもなく頷いたデュランダルを見て、タリアは肩をすくめる。この人は、〝何を見て〟、その決断を下しているのか。そんな問答をしても今は意味がない。だから後にする。今はとにかくインパルスとパイロットを失わないことが最優先だ。
「ーーミネルバ、発進シークエンススタート」
「本艦はこれより戦闘ステータスに移行する!SCSコンタクト、兵装要員は全ての即応砲弾群をグレードワンへ設定!」
副長の声と同時に、進水式典を待つ身であった巨大な新造船艦は、その息吹を吹き上げながら発進準備を整えていく。ドッグに鳴り響くアラームの中で、タリアはデュランダルに小さく言葉をかける。
「議長は早く下船を」
この船は、〝今この瞬間をもって戦場に出る船〟となったのだ。彼らが安全だと言って避難してきた場所が、戦線の最前線となる。そんな場所に、ザフトの要人…それもプラント最高評議会の議長を置いておくわけにはいかない。
そんなタリアの言葉に、デュランダルは困った様に笑った。
「タリア、とても残って報告を待っていられる状況ではないよ」
「しかし…」
「私には権限もあれば義務もある。私も行く。許可してくれ」
言葉とは裏腹に、熱のない目と表情がタリアを射抜く。彼はいつもそうだった。あの時から今までずっと、彼の目に熱があるところを、タリアは見たことがない。
そして、そんな目をする彼もまた、自身の言葉を曲げない意固地さがあるのを、彼女は充分に理解していた。
「ーーー承知しました」
折れるようにタリアが瞳を伏せて、体を前に向ける。そして、ほんの少し間が空いたのち、デュランダルは思い出した様にタリアへ語りかける。
「ああ、そうだ。確かオーブの来賓方も…」
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